Column (2004/03/29号・週刊ベースボール掲載分)
◎一年のご愛読に感謝して

 「川上さん、巨人−阪神の開幕戦(4月2日:金)の始球式をされるそうで、よかったですねぇ。おめでとうございます。練習するんですかぁ?」
今シーズン球団創立70周年を迎える巨人は開幕戦の始球式に打撃の神様・X9監督の川上哲治さんにお願いすることを決めた。このニュースをキャンプ地で聞いた私は嬉しさのあまり、川上さんに電話を入れたのだ。
 昨年までの各球団の始球式のほとんどは、タレントや女優など野球に関係のない人が登場し、私にいわせれば、みっともない、おかしな投球でお笑い草だった。やっと野球人の大先輩を迎えることになった。

 真のプロ野球ファンも、こういう始球式を待っていたのではなかろうか。
「やあ、島村さん、久しぶり、長生きしたかいがありましたよ。正直、嬉しいですねぇ。みっともないことはできないので、そろそろピッチング練習しようと思うとるんですよ。なんせ、私ももとはピッチャーですから」
 そう、川上さんは甲子園の全国中等野球選手権の準優勝投手なのである。
「キャッチボールのお相手はいるんですかぁ」「えぇ、孫か息子に頼もうと思うんですが、できますかなぁ、ワッ、八ッ八ッハァ」
 最近は膝や腰の具合が悪く、冬はゴルフも休みがちだった川上さんだが、ゴルフへの意欲はいまだ衰えてはいない。毎年、エージシュートを目標に練習を重ね、色紙に書く言葉「努力」を実践し続けている。4月2日の東京ドームのマウンド姿が、今から待ち遠しい。背番号は打撃の神様の16なのか、X9監督の77のいずれなのだろうか。私は16番が希望なのだが・・・・・。野球ファンにぜひお願いがある。ドームに観戦に行くファン、TVで見るファン、そのおじいさん、お父さんたちよ、どうか息子や孫に語り継いで欲しいのです。アメリカの大リーグを観戦に行くと、祖父が孫に、父が息子に語りかけ、語り継ぐシーンを、とく見かけるのです。野球が文化として継承されるのは、こんなところからスタートするのではないでしょうか。
 アメリカ大リーグを招く日米野球のオープン戦にも、長嶋さん、星野さん、原さんの始球式が予定されている。長嶋さんは今度の病気で難しいだろうが、こうした発送をぜひ続けて欲しいのだ。その他にも、北海道にフランチャイズを移す日本ハムは北海道内の小学生に作文を書いてもらい、選考するという方法をとるそうだ。これも子供たちに夢を育てることになる素晴らしい始球式になるだろう。ヤクルトも、まだ非公式ながら、高校野球連盟の了解が得られれば、高校生を招く計画を考えているようだ。プロアマの垣根をとりはらおうとしている時期だけに、これも興味深い、ぜひ実現して欲しい始球式といえるだろう。
 1年間のお約束で書かせてもらったコラムも今週で終了する。最後の最後にスポーツ記者クラブに一言申し上げたい。現実に適した記者章を発行して欲しいのです。いまプロ野球の全試合はCSといわれる波で全て放送されている。しかるに、その放送に携わる放送局のデュレクターたちは記者クラブに未だに加盟することができず、球団の認めるカードをぶら下げて取材し、中継している。プロ野球に最も近いところにいる取材者を記者クラブがシャットアウトしている現状は現実的とは言い難いのだ。私が一緒に仕事をするJスポーツの仲間達は、毎日現場から中継しているのにジャーナリストとしてのバッジをつけられない現実を、ぜひ一考して欲しいとお願いしたいのです。
 1年間、数々の反響をいただき、有難く感謝しつつ、終章とさせていただきます。



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