Column (2004/03/15号・週刊ベースボール掲載分)
◎キャンプからオープン戦へ

 「いゃあ、立派な室内練習場ですなぁ。ダイエー、巨人、この南郷の西武と、どの室内もすごい施設や。日向のうちだけ見劣りするなぁ」と嘆き節を呟いたのは、西武の新キャンプ地・南郷町を視察を訪れた近鉄の球団関係者だった。
 一年のプロ野球の仕込をするキャンプ巡りの旅を、今年も二月中旬から約半月、一日一球団の取材スケジュールを組み廻ってきた。かれこれ30年に及ぶ楽しい、思い出作りの旅になるのだが、一番変わったことは?といえば、このところのキャンプ地の施設の充実ぶりだ。

 キャンプ地を訪れるファンや観光客が地元に落とす経済効果を考えれば、キャンプ誘致に南国の県がやっきになり、施設を整えるのは当然であろう。以前は各地に分散していたキャンプ地も、今年から沖縄と宮崎に二極集中、勝ち組はこの両県になったといえるだろう。
 今では、どのキャンプ地も室内練習場が完備された。昔は雨が降るたびに振り替え休日になったものだ。各地を巡っていると、雨のお陰でスケジュールが変わりホテルの手配から、列車、航空券の変更と苦労したものだ。今のキャンプは雨が降っても室内で予定通りスケジュールをこなせるようにになっている。球界の先輩達にいわせれば、「今の奴等は恵まれすぎている」というかも知れない。
 福岡ダイエーが宮崎市生目に新しいキャンプ地をはったが、ここは日本一といってもいいほど整備されている。立派な本球場、サブ球場、大きな室内、投球練習場が一ヶ所に固まっている。選手は移動しやすいし、ファンもすぐ近くで選手を見ることが出来る。キャンプ中の観客動員は巨人を上回っている日も多かった。このキャンプ取材で私が一番感銘を受けたのは、ルーキー馬原のピッチングだった。安定したフォーム、しなやかな腕の振り、ボールの勢い、伸び、ボールはほとんど低めにコントロールされ、乱れがない。こういう逸材に出会えるとキャンプ巡りの「値打ち」を感じる。なんだか、一日得した気分にさえなるのだ。斉藤、和田、杉内、寺原ら豊富な若い投手陣がそろい、ダイエーのキャンプ地は若い女性ファンが一番多いようにも感じたのだ。
 伝統の巨人のキャンプ地も整っているが、ここは一つ一つの施設が離れすぎている。車か自転車がないと不便だ。ファンにとっても選手との距離は離れているの、どうしてもメイン球場のバッティングしか見られないかもしれない。もっとも、巨人のキャンプを楽しむのは豪華な打撃陣さえ納得するかも知れないが・・・・ただ、ペナントレースの勝負は投手陣だろう。巨人キャンプはファンサービスは行き届いている。本職の場内アナウンス嬢が打撃練習を紹介するし、球場の入り口には現在の打撃練習をしている様子をボードで表示している。ファンサービスの「見せるキャンプ」も大事なのだ。報道陣にも巨人だけはイヤーブックをキャンプ中から配布している。取材用の帽子と名札のストラップもいいもので「足りなくなりました」などということはないのだ。
 宮崎・南郷町にキャンプ地を移した西武、ここも施設はコンパクトだ。ただ、斜面を利用しているので、階段の上り下りが急坂になる。尤も、選手にとってはいいトレーニングになるだろう。伊東新監督の考えで、地元を知ってもらい、交通の便が悪いのでファンサービスを積極的に行おうと、選手は移動の間に時間の許す限りサインに応じていた。松井が抜け、西武の人気がやや下降気味になることを敏感に受け止めているようだった。
 ともあれ、キャンプは終わり、オープン戦がスタートした。戦力の分析をするこの一ヶ月が楽しみだ。



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