Column (2004/02/02号・週刊ベースボール掲載分)
◎アテネ五輪での野球

 オリンピックイヤーを迎えた。今回ほど五輪種目の中で野球が話題になったことはないだろう。ひとえに、長嶋さんのカリスマ性、長嶋さんのアピール度にかかっているといっても過言ではないだろう。別に水を指す気はサラサラないが、五輪で世界での野球の認知度は日本人が思っているほどではないことだけは認識しておく必要がある。
 これからアテネ五輪の代表枠を選ぶにあたって、まだまだ波乱がありそうだ。それは、野球関係者の全てが五輪至上主義者ではないということだ。

 まして、五輪に野球が認められるまで、公開競技として参加していたころのアマチュア野球の関係者は本当はいいたいことがあるはずなのに、黙って耐えているように私には思えるのだ。「ミスターベースボール」がやるのだから世論は構築されている。ここは流れにまかすしかないと・・・・・
 しかし、長嶋監督が1球団2人枠の撤廃をのぞみ、星野仙一さんが指示する発言が流れると、穏やかではないプロ野球関係者が本音を語り始めた。要するに五輪が大事か、プロ野球のペナントレースが大事なのか、この一点である。もともと、アテネ代表への02年11月のオーナー会議で各球団から2人の基本方針が決められていた。このとき巨人の渡辺オーナーは「若者の野球離れを防ぎたい。巨人は金メダルのためにはペナントを犠牲にしてまでも全力を挙げる」と発言した。
 新春早々、中日の落合新監督長嶋全日本監督の1球団2人枠見直し発言に反論、「各球団を均等にしなければペナントレースが成り立たない。日本のプロ野球は五輪が目標ではなくペナントレースのはずだ」確かに、1球団から3人、4人抜けては、五輪ティームとしては理想的な編成が出来るだろうが、ペナントレースは骨抜きになってしまう。そのために主力をとられたティームが減速し優勝を逃す。逆にタナボタで優勝が転がり込んできたティームが「真のチャンピオン」と言えるのだろうか。
 このことは野球ファンによ〜く考えて欲しいのだ。五輪のあり方、プロ野球のあり方に関わる重要な問題なのだ。
 私は五輪はアマチュアのものだったという基本を大切にしたい。しかし、時代の流れでプロが活躍する場になったことを認めざるを得ない。五輪はアマチュアリズムという考えはもう古典になってしまったのは事実なのだから。ただ、ペナントレースがどうなってもいいから五輪でメダルをという五輪、金メダル至上主義には納得できないのだ。この一年シーズンを通して戦うプロ野球の監督、選手はどんな思いで戦えばいいのだろう。五輪に行けるのは全体のごく一部のスター選手だけなのだ。
 また、プロ野球を産業・企業という面からみれば、ファンに対して夢を売る戦いを自ら手放すことになるのだ。アメリカは予選で3Aを出して敗れた、これは誤算だったかもしれない。しかし、たとえ代表になたとしても夏のペナントレースの大事な時にオールスター級をアテネに送ることはしないのだ。五輪よりMLBの産業のあり方が基本にあるのだ。
 ペナントレースをぶち壊したくないと主張する落合監督の発言はもっともなこと、選手の中にもシーズンを大切にして欲しいという意見がある。プロだから個人成績にこだわって当然である。
  各ティーム平等に選手を派遣し、ペナントレースも最低限の負債の中でプロとしての戦いをする。そして、代表になった全日本が立派な試合を野球の普及のために世界に披露する。今はこれが最善ではなかろうか。30日のオーナー会議を注目したい。



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