Column (2003/11/17号・週刊ベースボール掲載分)
◎ファンの力〜日米シリーズの盛り上がり〜

 11月末に釧路市教育委員会のお招きで、北海道の体育指導者の研究協議会に参加、「スポーツ文化と地域スポーツのあり方」というテーマで講演をさせてもらった。地域との結びつきという話の中でプロスポーツに話が及んだ時、北海道は圧倒的に巨人ファンで占められていること。今年の星野監督人気で阪神ファンも結構増えていること。釧路など漁港を持つ町は、太陽漁業の名残りで横浜ファンも存在すること。パ・リーグにはあまり興味がないということ。これまでの長い間のTVの影響で「巨人しか見ないから、そうなった」という明快な結論だった。「札幌に日本ハムがやってきてもどうなんでしょうか?」とあまり関心のない様子だった。

 アメリカのプロスポーツの発展は、TVを抜きにしては語れないが、日本でも同じこと。ただ、これからは地上波だけに頼らず、プロ野球ファンはBS、CSを積極的に取り入れることだろう。今回の日本シリーズの第7戦はTV東京の放送で、ネットワークのない県が半分はあり、苦情が多く寄せられたという。しかし、NHKのBSもやっていたわけだから聴取者は、お金を払って番組と商品を買う感覚が必要となろう。CS放送はシーズン中、全ティームの全試合を放送しているのだから、コミッショナーはCSにも放送権を与える時期にきていることを認識すべきであろう。契約さえすれば、どこでも見られるCS、BS放送はプロ野球と地域を結ぶカギになると、私は思うのだが・・・
 今年は日米ともに、シリーズを盛り上げたのは「ファンの力」といえるだろう。勝利インタビューで、王、星野両監督を始め、ヒーロー選手たちが毎回、「ファンのみなさんの後押し、声援に勇気づけられました」と言っていたように、試合は声援に後押しされて盛り上がった。ドラマの演出のアシストはファンの力といえるだろう。同じ応援でも日本とアメリカ大リーグではまったく違うスタイルだ。日本は終始、手拍子、声、歌の応援であり、ジェット風船、横断幕、ボードなどの用具を使う。団体演技のように一糸乱れぬ統制のとれた応援団である。アメリカではフランチャイズ球団の場内アナウンサーが応援をリードする。そこにビジターティームの応援の食い込む余地はない。ただ、ピッチャーの投球の直前になると、球場全体がすぅっと静まりかえり、固唾をのんで投手と打者の対決を見つめる。投げる瞬間でも手拍子の日本とはここが絶対的に違うのだ。どちらがいいと言っている訳ではない。「対決」「闘い」を好むアメリカと雰囲気を楽しみ一体感で応援したい日本との違いだろう。
 ただ、私が大リーグで好きなのは、7回のちょっとしたセレモニーだ。プレイオフからワールドシリーズまで、選手も観衆も頭を垂れ「ゴッドプレスアメリカ」を歌い、「野球場へつれてって」を合唱する。白熱した試合の終盤に静かな祈りの歌を歌い、アメリカを讃える。日本は色鮮やかなジェット風船を両ティームのファンが飛ばし盛り上げる。まったく対照的なのが面白い。
 いずれにしてもファンあってのプロ野球、大リーグのような地域との結びつき、他のプロスポーツとの競争、消化試合なしでのポストシーズンへの移行、日本球界が手本にすることはたくさんありそうだ。



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