■ Column No.227 (2007/05/29デイリースポーツ掲載分)
● いつまでも待つ

 今年も初夏を迎えるパリにやってきた。全仏オープンテニス・ローランギャロスからの中継だ。この季節のパリは1年で一番いい季節、天候も安定しているし、ブローニュの森の緑も美しい。ところが、初日の日曜日、あいにくの雨で長時間に渡って試合は中断した。それでもテニスファンは傘をさし雨具を着てひたすら雨の降り続くコートを見つめ、待ち続ける。大会運営側も、雨の空を見上げ、出来る限りの努力をする。第2試合のエナン、ベスニナ戦は何と六時間近くも待ち続けた。午後0時40分のスタート予定が6時50分、私も放送席で晩飯を食べて待っていた。テニスの放送に来るたびに「待つ忍耐力」を教えられる。
 今大会は焦点となるスターが3人いる。このところのお馴染みで新鮮味はないのだが、時代を築いている最中の3人だ。スペインのラファエル・ナダルには3連覇がかかっている。一昨年、初出場で優勝、去年連覇を達成した。まだこの若者はローランギャロスで負けた試合がないのだ。ただ、クレーコートでの連勝を81で5月中旬にフェデラーに止められた。この全仏はナダルの新しいスタートになるとともに、「ナダル絶対の強さ」とは言えないかも知れない。
 全仏だけ優勝のない世界ランク1位の王者・ロジャー・フェデラー、憎らしいほど負けなかったフェデラーが今年3月にカニャスに連敗、4月のマスターズシリーズモンテカルロでもナダルにやられた。生涯グランドスラムはこのローランギャロスにかかっている。ドロー表をみると、カニャス、ゴンサレスとクレーコーターが準々決勝までひしめいており、ナダルが待つであろう決勝まで行くのは楽ではあるまい。
 女子では3連覇を狙うジュスティーヌ・エナンが大本命、「家庭の事情」で全豪を欠場したが、彼女のホームページで明かした「離婚」の痛手を乗り越え、新たに選手生活をスタートさせた。すでに、6戦して3勝、ローランギャロスは彼女の最も好きな、しかも自信のあるコートである。「自分の庭のような感じ。パリで3回優勝しているから、今度も野望は持っている。何より、ここに自分の居場所があるの」という。離婚の傷心から立ち直り、テニスに打ち込むファイター・エナン、両親の離婚、母の死、自分の離婚と家庭環境には幸の薄い彼女だが、辛さに耐える強い心は一番だろう。待たされた1回戦は相手を良く見て落ち着いた戦いで2回戦に進んでいる。日本のファンの皆さんが大好きなシャラポワは第2シードだが、右肩故障のあとだけに、体調次第、ちょっとクェッションマークはついている。



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