■ Column No.225 (2007/05/15デイリースポーツ掲載分)
● プレイオフのドラマ

 NBAはプレイオフに入り東西両カンファレンスのセミファイナルが行われている。すでに1回戦で昨年のチャンピオン・マイアミヒートがシカゴブルズに四連敗して連覇は消えた。オニール、ウェイドという2枚看板、名将パットライリーをしても今季の低迷の状態を脱出することは出来なかった。前年の王者が初戦で1勝も出来ずに消えたのはなんと50年ぶりのことだった。コービー擁するレーカーズもサンズに完敗、アイバーソン、アンソニーのナゲッツも初戦を突破できなかった。スパースターのいるティームに注目が集まり勝ちだが、バスケットはスターが頑張って30点、40点とっても勝てないケースが多いのだ。
 今季の私の期待はダラス、サンズ、ジャズである。何れもまだチャンピオンになったことがない。昨年、決勝で惜敗したダラスは何と1回戦でギリギリプレイオフに滑り込んゴールデンステートに敗れた大番狂わせがあった。「シーズン中、67勝と最多勝だったのが、何の意味も無くなるなんて」とがっくりしたノビッキーの自信を失った姿は可哀想としかいいようがない。
 ジャズはマローン・ストックトンの「メール」コンビをもってしても「神・ジョーダン」率いるブルズの壁を敗れなかった。今年はブーザー・ウィリアムスのコンビと今でも指揮を執り続けるスローン・コーチにマローン・ストックトンの夢を叶えさせて挙げたいと思う。先週のコールデンステートとの試合で素晴らしいドラマを放送させてもらった。デレク・フィッシャーというベテランのガードが「家庭の事情」で1戦目を欠場、第2戦もベンチにはいなかった。試合は一進一退のシーソーゲーム、そして第3Qの終わりごろ、フィッシャーがティシャツとジーンズ姿でベンチに向かってくるのをカメラは捉えた。「プレーは出来ず応援にきた」と私は思ったのだが、彼はウオーミングアップもせず、ユニフォームに着替えると、何とコートに登場した。超満員のスタンドは全員がスタンディングオベーションでフィッシャーを迎えた。彼の娘が重い目の病で手術をし、その結果を見届けて彼はコートにたどり着いたのだ。試合は延長戦にもつれ込んだ。そして、フィッシャーの渾身のスリーポイントシュートが鮮やかに決まり、ジャズはゴールデンステートに連勝した。フィッシャーは昨年まで、倒した相手のゴールデンステートのレギュラーだった。「僕を信じて、待っていてくれたティームメイト、コーチに感謝します。僕がコートに行くのを許してくれた妻にも感謝している」コートサイドでのインタビューにフィッシャーは声を詰まらせながら語った。ファイナルまでの道はまだまだ長く険しい。



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