■ Column No.220 (2007/04/10デイリースポーツ掲載分)
● 判り易い判定とは

 「ボール一つはサイドに広くとるとしておきながら、あんまりかわらないですねぇ」「どうもこの審判はバラツキがあり、選手はやりにくそうですね」プロ野球が開幕して放送の中で解説者がこのような発言をすることがよくある。選手や監督、コーチ時代に審判の判定に納得しなかったことがよくあったのだろう。
 審判は正しい判定をすることが当たり前なのだから、厳しい仕事といえるだろう。野球の球審は一試合で両ティームの投手合わせて約300球のストライク、ボールを判定する。ストライクかボールの微妙な投球は数多くあるはずだ。
 開幕して私が放送席で一番気になるのは、ジェスチャーやコールがわかり難いことだ。甲子園の高校野球を見た後だからなおさらだ。甲子園の球審は「ストライク」のコールの声もテレビの集音マイクからはっきり聞こえる。ジェスチャーも天に向かって高々とはっきり腕を突き上げる。見ていて気持ちがいいし、判り易い。プロ野球の審判でこのスタイルをとる人はほとんどいない。おもむろに、やや格好をつけて、一塁方向を向いて人差し指をだすストライクのコール。「ええカッコしい」のジェスチャーをする審判が非常に多い。私にはわかり難いこと甚だしい。実況をしていて、「どっちなんだ」と戸惑うことさえある。
 春のキャンプ中、審判の皆さんも12球団に分かれて、ティームのキャンプ地で投手の投球練習場でトレーニングをしている。その時は高校野球の審判に負けないぐらいの大きな声で「ストライクッ」と叫んでいる。ジェスチャーも右手を高く挙げる人が多い。ところが、シーズンが始まると「練習は練習、本番は別」というスタイルになってしまうように、私には見受けられる。
 パリーグの前川審判部長に確かめてみると、アマチュアとプロは違うので、ジェスチャーはそれぞれの個性を出してやって欲しいということ。判定の第一は声を出すことでジェスチャーは、極端にいえば無くてもいいのだそうだ。球場は騒音の中なので「聞こえないこともあるでしょう」という答えだった。
 私にはプロ野球の審判が個性的には思えない。むしろ、大きな声をだして、はっきりと判り易いジェスチャーをしてくれる人がいれば「個性的だ」と感じるだろう。アナウンサーの経験から言えば、声をもっと磨いて欲しい。トラブルがあった時「わかり易い説明をして欲しい」と思うのだ。「いい声を出す審判」も個性的といえるはずだ。皆が皆、一塁方向へ人差し指を出しているのでは、没個性的だろう。プロの審判の皆さんの多大の労苦は推察しているが、私には高校野球の審判の方が「颯爽」と、個性的に見えるのだが。



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