■ Column No.213 (2007/02/20デイリースポーツ掲載分)
● ON、ニアミス

 キャンプ巡りの旅も沖縄から宮崎へ入った。先週の金曜日の巨人キャンプは四年ぶりにミスターの訪問、さぞや大混乱とおもいきや、評論家諸氏はその日をさけたのか、思ったより平穏だった。一塁側のベンチに座り練習を見つめる長嶋さん、報道陣、関係者、ファンの声は「元気になられてよかったなぁ」
 巨人の練習取材は、報道陣は三塁側と限られているので、長嶋さんの傍には近寄れない。隣でお相手をしている黒江修透さんの携帯にテレ、「長嶋さんに、皆さん喜んでいますよ。よろしくお伝えください」と伝言を頼む。黒江さんの耳打ちにミスター、笑顔で頷いている。年甲斐もなく私は大きく手を振っていた。
 打撃練習が始まると、長嶋さんはケージの真後ろまできて練習に見入る。小笠原が意識的にレフト方向へのバッティングを行うと、身振り手振りで打撃フォームを確認、小笠原に語りかける。新外国人フェルナンデスにも興味を示し、不自由な足をものともせず、ケージに寄りかかるようにして見つめている。野球人としてのミスターの血が騒ぐのだろう。午後の紅白戦もネット裏の貴賓席で最後まで観戦、終身名誉監督として、巨人の今年を分析し、「勝て、勝て、勝て」と励ました一日であった。久しぶりのグラウンドの土の感触をミスターはどう感じたのだろう。色は白く、まだ足も不自由に見受けられたが、背筋をぴんと伸ばしてグラウンドを見つめる姿は、昔と変わらなかった。
 ところで、巨人のキャンプ取材に対する対応の素晴らしさは12球団1といっていいだろう。打撃練習では、本職のアナウンサーが選手の名前を紹介する。報道陣へのキャップ、名札、スケジュール表の配布、食堂での昼食、受付の対応ときちんとしている。今年は昼食を準備しない球団、キャップを配布しない球団さえあるのだ。
 この日、長嶋さんは、王さんのキャンプ地、ソフトバンクを訪問することなく、日帰りで東京へ帰られた。まだ、無理はできないからいたし方ないだろう。
 前日、私は王さんのソフトバンクを訪問した。「元気になりましたねぇ」と握手する。力がこもっているし、笑顔もふっくらとしてきた。「島村さん、よく焼けてますねぇ。あちこちまわってきたの」「ええ、あと3つです。王さん、やっぱり、ユニフォームがいいですねえ」「野球しかないもの、ユニフォームが一番ですよ」
 ONの元気は、同世代の我々の栄養剤になるようだ。



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