■ Column No.209 (2007/01/23デイリースポーツ掲載分)
● ホークアイの威力

 200キロを越す早く強いボールが行き交うテニス、審判受難の時代になっている。審判とラインズマンが四方を取り囲んで判定しても、分からなかったり間違った判定になることがある。メルボルンで行われている全豪オープンテニスでは、ついに昨年の全米に続いてカメラの力を借りて判定の助けを借りることになった。
 この「チャレンジシステム」というのは、選手が1セットのうちに2回、判定に疑問がある時に、審判に要求すると、巨大なテレビスクリーンにリプレイとしてボールの軌跡が写る。選手も審判もスタンドのファンも「さあどうか」と静まり返って注目する。そして、インかアウトかで、どっと歓声に変わる。試合をドラマティックに盛り上げるのにも効果がある。選手も笑ったり、がっかりしたり、悔しがったりと、人間味が出る。
 このシステムを開発したのはポール・ホーキンスさんという技術者で、「スポーツへの情熱から開発しました」という。「ホークアイ」という呼称はホーキンスさんの名前と「鷹の目」を合わせたものだ。過去の四年間はテレビで視聴者向けにボールがインかアウトかを映像として提供していたのだが、去年の全米オープンに続いて全豪オープンで初めて、競技のルールの上で審判の判定を訂正する役目を担ったことになる。このシステムは十台のカメラをアリーナに配置し、それぞれのカメラがボールの動きを瞬時に捉え、そのカメラの情報をコンバインしてラリーの軌跡を映し出すのである。選手は判定に納得し、自分を見失わず、喚いたり吼えたりは出来なくなる。選手と審判の衝突、醜い罵りも減ることになる。
 選手の評判はといえば、キム・クライシュテルスは「選手の助けになります。ボールがそんなに外れていたのと驚くこともあります。テニスの世界が進化しているので、スポーツとテクノロジーの結合はいいことです」サフィンは「いいと思う。一つの間違いが試合の結果を変えてしまう。機械の方が人の目より信用できる」とほとんどの選手は歓迎している。しかし中には王者フェデラーのように、「ホークアイで審判が責任を転嫁するようになる。審判がオーバーコールをしにくくなる。賛成ではない。ナンセンスだ」とまでいい切っている。
開発者のホーキンスサンは「野球やサッカーにも活用出来る」という。
 ただ、このシステムが生きるのはライン上のアウトかインである。野球のストライク、ボールのような空間の判定には問題だろう。ライン際のフェアかファール、ポール際のファールかホームランには有効だろう。「スポーツの判定に科学の導入」を野球ファンの皆さんはどう考えますか。



--- copyright 2001-2007 New Voice Shimamura Pro ---
info@shimamura.ne.jp