■ Column No.207 (2007/01/09デイリースポーツ掲載分)
● 友情の涙

 この年末年始、高校スポーツの素晴らしさを堪能した。そこには、プロスポーツにない純粋な想いが散りばめられていた。
 高校ラグビーの東海大仰星は2度目の優勝だが、9連覇の近畿勢の中では比較的歴史は浅い。高校スポーツは指導者のあり方に興味をもって見ているのだが、東海大仰星・土井監督の「選手の自主性を生かす」指導に共感を覚える。色々なスポーツを見ていると、何から何までサインや指示をだし、生徒を思うがままに扱う監督が、どちらかといえば多いように思える。選手を監督の操り人形にしてはいけないはずだ。土井監督がインタビューで答えた「自分たちの判断で試合を組み立てた」という東海大仰星、優勝という結果以上に尊いものを学んだはずだ。この試合、準々決勝で右足首を脱臼した北野選手を終了間際に土井監督は使った。「たった1分でも財産になった」「どうしても出してやりたかった」そこに、勝負を超えた心の絆があるのだ。
 年末の高校バスケットウインターカップでも、同じようなシーンに遭遇した。女子の3位決定戦・岡山県倉敷翠松対福井県立足羽高校の試合のことだ。前半の接戦から後半は倉敷翠松がセネガル人で196センチのバナ・ジョの活躍で点差を広げ、第4Qで「勝負あった」の試合展開になった。
 その時、足羽高校の林監督は青山選手をコートに出した。青山が今大会試合に出場するのは初めてだ。残り時間は5五分少々しかない。青山は涙を浮かべ泣きながらコートに出てきた。コート上の選手も泣き顔だ。ベンチの部員も、スタンドで応援する控え部員もハンカチを握り締めている。
 実は、青山はこのティームのエースだった。インターハイでは1試合で30点もとったティームの大黒柱だった。夏に右ひざを痛め手術をする。この大会はベンチ入りをしたが、試合には出られなかった。ティームは「青山選手への想い」を胸にシード校をやぶり、ベスト4まで勝ち進んできたのだ。
 残り5分の攻めで足羽の選手たちは、全てのボールを青山に集め、シュートを打たせた。練習はしていても、試合となるとシュートは中々入らない。もどかしい時間が経過するうち、やっと3Pが決まった。笑顔と涙が交錯する。体育館全体が青山にシュートを入れさせようと、大声援を送った。終了直前、もう1本シュートが入った。そしてホイッスル。足羽高校は3位決定戦に敗れたが、選手の笑顔と涙は、晴れ晴れとして美しかった。勝つことも大事だが、もっと素晴らしいものを得るのも高校スポーツなのだろう。



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