Column No.193 (2006/09/27デイリースポーツ掲載分)
◎ プロ野球への就職論

  高校生を対象にしたドラフト会議、願いがかなったもの、がっかりしたもの、思いがけぬ指名を受けたもの、今年も悲喜こもごも、明暗がくっきりした甲子園のヒーローもいた。4球団が競合した駒大苫小牧の田中将大投手は楽天の交渉権に対して実に立派な対応をした。
 「4球団に指名していただき光栄です。新しい球団なので、歴史に名を刻む選手になりたい。一軍で活躍してこそ本当のプロという意識があります。挑戦者として、自分の力を試したいです」プロに進む選手の見本のようなコメントである。誰もが憧れの球団はあるはずだ。北海道出身の田中君が日本ハムに入れば地域の盛り上がりはますます上がるだろう。しかし、一番弱い、これからという楽天に行けば、遥かにチャンスは多いはずだ。プロ野球に行くということは、プロ野球という一つの組織に就職するということだ。
 今まで、多くの球児たちが、憧れの球団、好きなティームに入って失敗し、消えていった。昔、日本ハムに指名された甲子園の優勝投手が「そんな球団、知らない」と拒否し、社会人経由でセリーグに入り、活躍出来ずに消えていったことを昨日の様に思い出す。
 沖縄・八重山商工の大嶺佑太投手は希望のソフトバンクではなく、ロッテに指名され落胆した。子供の頃からの憧れ、沖縄、九州出身の選手が活躍する、しかも王監督のホークスだから、大嶺君の想いもよくわかる。しかし、ソフトバンクか浪人かという選択は就職をする上では決して正しい選択とはいえないだろう。
 大嶺君の家庭環境からも、指導者の伊志嶺監督の影響力が強いように思えるが、本当にプロ野球組織を理解してアドバイスをしているのだろうか。一般的な印象として、高校野球の監督は「産業」としてのプロ野球についてしっかりと認識し、プロ野球で働くということがどうゆうことなのか、適切な指導をしている方は少ないのではないかと私は感じている。高校には、職業指導の専門家がおられるはずだが、プロ野球とはどういうものか、はっきりと認識して教えてはいないはずだ。
 野球の技術や取り組み方の指導だけではダメなのだ。「予想もしていない球団でびっくりしています」とはどうゆうことなのだ。ドラフトとはそうゆうもの、プロへ行くとはそうゆうものなのだ。ロッテがどんなに素晴らしいティームなのか、日本一と言われる感動的な応援をするティームを監督は、大嶺君はテレビでも見たことが無いのだろうか。高校生も監督もプロ野球に無関心すぎるのだ。「練習に明け暮れる日々」という尾藤さんの指導者めぐりの記事を私は虚しく読ませてもらった。大嶺君、ロッテに行きなさい。自分自身の手で職業としての野球の扉をこじ開けるのです。



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