福岡でのソフトバンク戦の中継の後、久しぶりに休みがとれたので、宮崎・日南へゴルフと温泉三昧の旅にでかけた。梅雨時のうっとおしい空模様から、何故か予感があり、ゴルフバッグの中に釣竿2本を忍ばせておいた。それが、なんと的中、チヌの大物3枚を仕留めるという満塁ホームランかノーヒットノーラン並みの快挙になったのだ。
広島、大阪に勤務していた頃は釣りに夢中になっていたのだが、ここ10年は竿を出すことは、ほとんどなくなっていた。関東近郊は私の釣り方では釣れなくなっていた。広島に勤務していた頃、「広島竿釣りクラブ」に属して「こだわりの釣り」をやっていた。このクラブの釣りは、リールを使わない、船に乗らない、まき餌をしないというルールがあった。のべ竿と糸とおもりとはりだけ、日が落ちてから夜中に波止場から波止場を探りながらつり歩く「探り釣」という釣り方である。主にめばるを釣るのだが、チヌやかさご、あらかぶといった海の底にいる魚を狙う。瀬戸内海の港から島々、中国山地を越えて山陰、遠く隠岐の島や五島列島までメバルつりに出かけた。「何を狙うんですか」「メバルです」というと、「へぇ、わざわざメバルつりにこんな遠くまで来るんですか、タイや磯の大物釣りじゃないんですかぁ」とバカにされたものだ。それでもメバルにこだわった。
この釣りは味を知ったらやめられなくなる。釣らせてもらう船のつりやリールの力で魚を釣り上げるのではない。リールがないから魚とやりとりをしながら吊り上げる。竿の先が細くて繊細に曲がるから、30センチ位になると最後は岸辺にたぐりよせてそっと引き上げなくてはならない。
柔らかい穂先の竿とファイトするメバルやチヌとのやりとりは、まさに釣りの醍醐味なのである。
小雨の中で、日南の油津港に注ぐ河口で久しぶりに竿を出した。なんだか、不思議に胸騒ぎがした。船と船が舫っている僅かな空間の海面にそっと投げる。
突然、竿が湾曲して強いひき、竿が「きゅんきゅんきゅん」と鳴る。この竿鳴りが聞きたくてリールなどは使わないのだ。激しくファイトする。「これはでっかいぞ」とはやる心を鎮めて、引かせてはたぐり、手繰っては引かせるやりとりの後、魚体が海面に姿を現した。ひれが黄色いのが見える。「黄びれチヌ」の大物だ。「やった。やった。」と心の中で叫びながら、慎重に引き上げた。37センチの大物だった。そして、2打席連続ホームランの39センチが立て続けに来た。味を占めた翌日、今度は44センチの特大が上がった。案内してくれた地元の青年原裕也君は大興奮「感動しました。身震いします」 ゴルフはダメでも、釣りの腕は錆びていないようだ。
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