Column No.179 (2006/06/14デイリースポーツ掲載分)
◎ 男女ともに連覇なる

 初めて、15日間の大会となったテニスの全仏オープン・ローランギャロスは男女の優勝者がともに二連覇を飾り、並みいる挑戦達を一蹴した。女子のジュスティーヌ・エナン・アルデンヌは今年の全豪の決勝戦で肩の痛みを和らげるための薬をのみ、その影響で試合中に腹痛がでて無念のリタイアーで優勝をアメリーモレスモーに譲ってしまった。最悪の決勝戦になってしまったことに彼女は悔いを残し、またエナンの人気を落とすことにもなったかもしれない。
 今大会の人気と注目は復活のヒンギスであり、日本人が異常に好きなシャラポワであり、地元のヒロイン・モレスモー、さらに去年の全米チャンピオン・クライシュテルスだった。エナンの強さと安定感を誰もが認めながらも、いまいちクローズアップされなかった。もっともベルギー同士の、クライシュテルスとの決勝戦のスタンドはフランス語圏で育ったエナンへの声援は大きかった。試合内容はスコアーを見れば、エナンの圧勝に見えるが、実はそうでもない。試合の中盤、肩で息し、ゆっくりと時間をかけ、苦しそうな仕草のエナンを「危ないなぁ」と記者席から見つめていた。しかし、エナンの粘りと耐える力は厳しい少女時代に培われたのか、今年も盛り返し、最後にクライシュテルスをまた決勝で破ってしまった。プレッシャーで眠れず睡眠不足だったと、正直に語ったエナン、決して楽にスイスイ優勝したわけではない。全仏に連勝、3回目の優勝、これでグランドスラムのタイトルは5つ、全豪の決勝リタイアという借りはきっちり返したといえるだろう。
 男子のラファエル・ナダルとロジャー・フェデラーの決勝は両者に様々な連勝記録がかかる大一番だったが、ナダルの強さは圧倒的だった。第1セットを1対6で落とした時はやはり王者フェデラーかと誰しもが思ったかもしれない。しかし、そこからのナダルの逆襲に転じる精神力と、どんなボールでも拾って、しかも一瞬のうちに有利なショットに変えてしまうパワーと技は一体ナンなのだろう。今大会は決して順調な試合を行ってきたわけではない。それが、最後のここ一番の決勝で、今大会最高のテニスで締めくくってしまった。まさに「怪男児」といえるだろう。クレーコートの連勝も60、クレー大会の優勝も10と勝ち続けている。次は芝やハードでの活躍になる。
 全仏に連勝のエナンとナダルは今大会中に誕生日を迎えた。エナンは6月1日に24歳、ナダルは6月3日に20歳とまさにハッピーバースデーウイークの優勝だったのだ。
 3週間のパリから、今日の午後、日本へ帰る。またプロ野球のマイクに向かいます。



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