Column No.173 (2006/05/03デイリースポーツ掲載分)
◎ スポーツ中継の新時代

 4月27日、広島市民球場での試合前、首位を突っ走る巨人と広島の6回戦、原監督が笑顔で迎えてくれた。「やあ、先輩、どうしたんですか、広島へ?」「今日、Jスポーツで放送なんだよ。地上波は、なしだってさ」「ええっ。本当ですか。巨人もなめられたかぁ」
 どんなに巨人が弱いときでも巨人戦はテレビ局のドル箱だった。しかし、最近は視聴率が取れなくなってきた。今季の快進撃の最中に地上波なしで、CSの独占放送となれば、原監督ならずとも驚きを隠せない。最近の日本のテレビを見ていると、人気回復、視聴率確保のために色々な取り組みを見せている。電車内の中継、携帯サイトでの当日券情報の配信も始めた。試合内容も快進撃にあわせて、巨人ファンには面白くなっている。それでも視聴率が伸びないのは何故か。もう昔の夢を追ってもだめなのだ。一つは視聴者の放送番組の好みが多様化したこと。そこにはBS、CS放送の普及で全12球団の試合を見ることが出来るようになったことも含まれる。そして、もう一つは、放送時間の延長に努力はしているものの、相変わらず「大変残念ですが、最後までお伝えすることが出来ません。お許しください」という結果を伝えられないアホな野球中継が続いているからだ。
 接戦の面白い試合になれば、当然試合時間は長くなる。いくら延長しても、そこには限度がある。次のドラマを楽しみにしているファンからはお叱りがくる。最後のドラマティックな場面を前にして「残念ですがサヨウナラ」にならざるをえないわけだ。今年も巨人、阪神の延長十一回の李の逆転サヨナラホームランなどファンが見たい場面は何度か切れてしまっている。つまり、もう野球中継は地上波の時代ではないのだ。
 今私が放送しているJスポーツは1・2・プラス・ESPNという4つの波を持っている。その他の別会社のチャンネルを合わせ、月に2,300円のプロ野球セットに加入すれば、毎日プロ野球の全試合を楽しむことが出来るのだ。完全中継が売り物だ。いまや、テレビ番組は商品を買うのと同じ感覚になることだろう。CSは野球だけでなくあらゆるジャンルの番組がそろい、数百チャンネルを並べている。ただ、まだ発展途上といえる。それは、ディレクターアナウンサー解説がまだまだ不ぞろいなのだ。地上波をそのまま貰った野球、奇を衒ったテニス中継や雑談の多いサッカーや卓球を聞いていると「本当にいいもの」を楽しんでもらうには、これから中身の充実を問われることになるだろう。
しかし、スポーツ中継の新時代の旗手の一人がCS放送であることは確かなことだろう。



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