Column No.168 (2006/03/29デイリースポーツ掲載分)
◎ コールは明確に

 興奮のWBCの余韻が残る中、甲子園のセンバツ、プロ野球パリーグが開幕した。WBCでの日本の大活躍とファンの盛り上がりを見ると、野球人気は決して下り坂ではないことが確認できたはずだ。巨人中心のプロ野球から、パリーグの魅力を知る絶好の機会にもなった大会といえるだろう。
 ブラックユーモアーでいうなら、興奮の火付け役は、あの迷審判・デービッドソンだったのかもしれない。日米戦の明らかな誤審騒動で、日本だけでなく、米のメディアも大きくとりあげ、野球ファンの怒りがWBCへの大きな関心に繋がったといってもいいのではなかろうか。
 甲子園のセンバツが始まり、私はアマチュアの審判の方々の基本に忠実なゼスチャーに心からの拍手を送っている。それは、アウト、セーフ、ストライク、ボールの判定の巧拙ではなく、はっきりと判りやすい明確なジェスチャーをしているからだ。審判の判定は選手だけでなく、見ている観衆、テレビを楽しんでいる人にもはっきりとわかる仕草をするべきだ。以前、甲子園の審判を長いこと勤めた永野元玄(もとはる)さんの大きく判りやすいコールが私は好きだった。永野さんは土佐、慶応で活躍した大型捕手だったので、見栄えがした。ストライクのコールは両膝を開き、天に向かって拳を高々と突き上げ「ストライク」とコールしたものだ。ストライクのコールはかくあるべきだと私は確信している。投手が精魂込めて投げた球なのだ。しかるに、日本のプロ野球の審判は米の悪いところばかり見習って真似をしている。ストライクの時、なぜ一塁方向を向いて、人差し指だけだし、小さなゼスチャーで「ええかっこしい」をするのだ。はっきり言って判りにくい。春のキャンプのブルペンで、審判もまた、トレーニングをやっている。その時は、大きな声で「ストラァィック」「ボールッ」と大きな声と大きなゼスチャーでコールしている。しかるに、シーズンが始まるとそうではないのだ。キャンプは練習のための練習なのか。プロの審判は基本に戻ってアマの審判のひたむきさを見習って欲しい。下手な米の審判の悪しきところを真似する必要はないのだ。
 日本に来ている外国人監督が言っていた。「日本の審判の方がメジャーの審判よりはるかに旨い。もっと自信をもってやって欲しい」何のためにコールをするのか、基本に戻って欲しいのだ。米の真似などせず、高校野球のように「天に向かって高々とストライク」のコールをして欲しい。野球中継をする我々アナウンサーがどんなに遣り難い思いをしているか、プロの審判の皆さんはご存知ですか。



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