イ・スンヨプの鋭いスイングから放たれたライナー性の当りは逆転のツーランホームランとなってライトスタンドに突き刺さった。国際大会の実況を担当していてこんな場面が最も辛い。私は落胆を心にしまい、気力を振り絞って実況を続けていた。
WBCのアジア地区予選は王監督が拘った「アジアNo.1」でアメリカに行く」という願いは叶わなかった。五輪を始め国際試合は、いつも思うのだが、力が上でも確実に勝てるとは限らない試合がよくある。そこに、国の代表としてのプレッシャーや思いがけない力や運が働くのだ。満塁のチャンスに放った西岡のライトライナーをイ・ジニョンがダイビングキャッチしてから球運は韓国に傾いた。この試合に賭けた韓国の愛国心の方が強かったのだろうか。兵役義務のある韓国では野球を続けてやるには、結果が大きな力になることもあるやに聞く。
アジアNo.2だったが、王ジャパンはアメリカでの2次リーグに進み、月曜日にはアメリカへ向かった。すでにキャンプ地のピオリアで練習を始めており、現地時間の8日にはロイヤルズと練習試合を行う。2次ラウンドへ1位で進むか、2位で進むかでは違いがある。どちらが良かったのかはこれも「運」である。日本は韓国と共にA組の代表だがB組の予選は今日から始まっており、ここにはアメリカ、メキシコ、カナダ、南アフリカがいて、総当りで2国が出てくる。1位はアメリカ、次はメキシコかカナダと予想されるが、これも何が起こるかわからない。
組み合わせでは最初に韓国とB組の1位が当る。日本の初戦はB組の2位、誰もが韓国、アメリカ戦が最初にぶつかり、日本は2戦目でアメリカになるから「負けて2位でよかった」と思っている。しかし、メキシコもカナダも大リーガーを並べている。確かに実力はアメリカとみるのが常識的かも知れないが、国際大会は分からない。どこと当るかよりスケジュールが問題だ。1位の韓国は3試合ともナイターだが、2位の日本は、デーゲームの1時と4時の試合、最後の韓国戦がナイターである。アリゾナ・アナハイムのデーゲームは日差し、暑さ、風などの問題もあるし、試合開始時間がそれぞれ違うとコンディションの調整には気を使うことになるはずだ。そして、最後の3試合目で再び韓国と対戦する。今度はアジア予選とは違い、全勝対決の可能性は少ないだろう。
3地区の予選は今日から始まり、ジェイスポーツでは全試合を放送している。日本のライバルの力も知って、WBCを見て欲しい。 |