Column No.157 (2005/12/21デイリースポーツ掲載分)
◎ 年齢制限の是非

 トリノ五輪を目前にして、天才少女がフィギュアースケート界で世界の頂点に立った。突然現れたように思われがちだが、ジュニアではタイトルを総なめにしてきた。なにしろ、今季無敗の女王・スルツカヤを抑えてグランプリシリーズのファイナルで優勝したのだから世界一の快挙になる。ところが、その美少女・浅田真央は年齢制限にひっかかり、来年のトリノ五輪への出場が適わない。「そんなバカな話があるのか」と誰しも思うだろう。昔、私が実況した、あの岩崎恭子ちゃんは14歳と6日だった。15歳の浅田真央が明らかに年上である。水泳はよくて、スケートがダメなのは、国際オリンピック委員会の問題ではなく、競技団体の考え方、規則から、このような違いが出てくるのだ。
 国際スケート連盟は年齢制限を設けている。その根拠は子供の成長を損なうような過激で行過ぎた練習や精神的重圧を避ける医学的な立場から、五輪と世界選手権への年齢制限を設けている。かつては特例も認ており、長野五輪の金メダリスト・リピンスキーに適応したのだが、彼女がすぐにプロになったり、体調を悪くしたので特例も認めなくなった経緯がある。
 女子選手のローティーンが活躍する現象はなにもスケートだけではない。ゴルフ、テニス、体操、飛び込み、卓球など色々な競技で見られる傾向だ。一芸に秀でるのは、むしろ小さい子供の頃から本格的に取り組まなくては間に合わないというのが現状である。テニスの世界の女子はまさにそうだ。来日するシャラポワの例をみれば明らか。ゴルフのウイーもそうだ。
 問題は自分の考えが確立されていないのに、スポーツビジネスで稼ぎたい大人たちの思惑のまま、ちやほやされてしまうことなのだ。競技以外に興味をもちバーンアウトしてしまうケースが激増する。女子のプロテニス界には出場試合数の制限が設けられている。
 では、真央ちゃんのケースはどうなのだろう。彼女は「少し出たい気持ちもあるが、次のバンクーバーでいい」と健気に答えている。しかし、4年の間に女性の身体は間違いなく変化する。今のように軽々とジャンプできるかどうかは保障の限りではない。すでに浅田は厳しい練習をこなしているのだ。そのことは医学的にみてどうなのだ。国際グランプリファイナルは五輪、世界選手権並みのハイレベルな大会だ。その大会に出られて、五輪がダメだというのでは、現実に合わない。むしろ、グランプリファイナルに出さないのならわかるのだ。年齢制限をするなら、ジュニアはジュニアの大会だけ、練習量の医学的規制も明確にすべきだろう。



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