Column No.146 (2005/10/05デイリースポーツ掲載分)
◎ 旅のつれづれ

 福岡ヤフードームでパリーグの最終戦、ソフトバンク対楽天戦の放送を終え、2、3日休みがあったので、ぶらっと北九州、門司、山口へ旅にでた。北九州の小倉は42年前、NHKの新人アナ時代、研修で1ヶ月を過ごした懐かしい地だ。その後、何故か訪ねることはなかった。市内の健康ランドで湯につかりながら、地元の初老の方と言葉を交わした。血色のいい方だったので健康の秘訣を聞くと、還暦の年に糖尿病と診断され、一念発起、マラソンに挑戦しているという。ハワイのホノルルマラソンに毎年出場、今年もペースリーダーとして仲間の皆んなが完走できるような役目で走るという。目標はタイムではなく、5時間から6時間かけてゴールを目指す。
 参加者は毎年3万人から5万人、日本人が7割位を占めるので、航空券を手に入れるのも一苦労の様子、今年で10年目と言われるから70歳にはなられているはずだ。肌つやは若々しいし私のように腹は出ていない。「今日もハーフを走ってきました。ビールが旨いですよ」スポーツの素晴らしさ、原点はこの辺にあるようだ。
 翌日、門司を車で走っていると門司球場の横にさしかかり、グランドから球音が聞こえてきたので寄ってみる。軟式野球で九州、四国、中国地方の40のティームが集まり大会を開いていた。病院、消防、電力、石油、食堂、市役所などのティームで、恐らく早朝野球、土日の野球を楽しんでいる、いわゆる「草野球ティーム」の大会だった。


 西武ライオンズのユニフォームにそっくりのティーム・南郷球友会と充(みつる)という名のティームの対戦だった。宮崎県の南郷町は西武ライオンズのキャンプ地だから西武カラーだった。「充」というティームは山口県の宇部市からで、宇部商業でプレーしていた充君が若くして亡くなったのを悼み、かつての仲間たちが集まってティームを創ったのだという。40のティームが参加しているのだから「草野球」とて侮ってはいけない。かつて甲子園で活躍した選手も野球を楽しんでいる。
 ただ、毎日トレーニングや練習をしているわけではないから、珍プレーも続出する。気がついたのは、野球はみな同じだということだ。投手のコントロールが悪く、四球を連発する。フライを落としたり、送球が悪かったりと守りのミスが連鎖反応を起こし、大量失点に繋がってしまうということだ。久しぶりの遠征ともなれば、野球の話で焼酎もまわり午前様で登板ということもあるようだ。以前、PL学園を率いて甲子園で活躍した中村順司監督に伺った言葉を思い出した。「甲子園で優勝することはティームとしての目標です。しかし、私の選手への願いは、高校で野球をやったなら、どんな形でもいいから30歳までは野球を友としてやって欲しいのです。皆がプロ野球にいけるわけはありません。それが、草野球でもいいのです。そのための基本の技量を私は教えたいのです」充も素晴らしい集まりだし、南郷球友会もいいティーム名だ。
 旅のつれずれ、スポーツを楽しむ人々に会えて、いい旅いい気分でした。



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