Column No.142 (2005/09/07デイリースポーツ掲載分)
◎ 病をのりこえて

 中盤に入った全米オープンテニス、男子は波乱続き、女子は上位シードが順当に勝ちあがっている。男子の第2シードラファエル・ナダルをノーシードのジェームズ・ブレークが2回戦で破った。アメリカのテニスファンはロディックが初戦で負ける大波乱があっただけにブレークの殊勲に興奮した。
 ブレークは一昨年まで世界のトップ目前まで駆け上がった。しかし、首を強打して目や耳に障害を起こし、顔面の湿疹にも悩まされた。しかも、父をがんで失った。悪いことだらけでランクは急降下、忘れられかけていた。女子ダブルスに出場のコリーナ・モラリュウは白血病で生死の境をさまよったあと昨年からコートに戻ってきた。2人だけではない。厳しい世界ツアーのスケジュールの中で、世界のトップは常に怪我や病と闘っているのだ。

 病と闘っているのは選手だけではない。広島カープのキャンプ地・宮崎県日南市の中学生村山静香ちゃんは心臓移植手術を行い、経過は良好、いまマンハッタンのアパートで生活しながら手術を受けたコロンビア大に通院している。テニス中継の合間をぬって、先日セントラルパーク近くのアパートに静香ちゃんを見舞ってきた。母直子さんは「ドナーの方への感謝」を語ったあと、「今日、9月4日に傷口のテープを剥がしました。15センチほどの小さな傷跡で驚きました」ただ、静香ちゃんの闘いは続いていた。感染症と拒絶反応を抑えるために大量の薬を飲まなくてはならないのだ。
 1日4回、今は減ってきたのだが、それでも全部で40錠の錠剤を飲むのは苦痛だという。時々、拒絶反応が出てムカムカしたり、夜中に吐くこともあるそうだ。今は気分のよいときに近くのセントラルパークを母と一緒にゆっくり散歩する。もう少し状態がよくなったら、太らないために軽い運動を始めるように担当医に薦められている。「お世話になった方々、支援してくださった方々にありがとうと伝えてください。早く日南に帰りたい」と静香ちゃんは呟いた。あと5ヶ月は通院が続きそうだ。ニューヨークの寒い冬も経験しなくてはならないようだ。「2月のプロ野球のキャンプのときに取材に行くから、その時に会おうね」と約束してさよならをした。セントラルパークの秋風が心地よい。
 「村山静香ちゃんを救う会」は僅か4ヶ月で9千万円の募金目標を達成した。このコーナーでも紹介したのでご協力いただいた方々に御礼も兼ねて静香ちゃんの近況を報告させて貰った。



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