Column No.130 (2005/06/15デイリースポーツ掲載分)
◎ 審判を下すとは

 全仏オープン中継のパリから帰ると、再びプロ野球の交流戦に戻った。昔なら考えられないことだが、インターネットの発達した今では、到着の翌日からでも現場に入れるのだ。パリにいてテニス中継の合間にも、毎日インターネットを使ってプロ野球のデータをまとめられるし、パリやニューヨークだと日本のテレビニュースを見られる。時には、プロ野球中継が流れてくることもある。
 ところで、帰国して早々、ロッテvs巨人戦の審判団の不手際を見ていて腹が立った。日本の審判はなんてお粗末なんだ。判定の技術論をいっているのではない。日本語を知らない、伝えるすべを知らないというのは、職業人として失格といわれてもいたし方ないだろう。
 審判はマイクをもって場内に説明するなら、きちんと判りやすくすべきだ。事の成り行きは、打者がバントして走り出したさい、捕手と接触、捕手は転倒して送球ができず、バレンタイン監督は「守備妨害」と抗議したが認められなかった。バレンタイン監督はルールブックを手に激しく抗議を繰り返した。審判に解釈を要求したのである。しかるに審判が監督や場内に説明する際、「成り行きとして試合を再開します」とアナウンスした。いったい全体なんのことなのかさっぱりわからないではないか。
 バレンタイン監督に日本人の伝える能力のなさを軽蔑されているかのようで、私も日本人として恥ずかしい思いをした。どうやら、「成り行き」とは審判同士で使われる業界用語。ルールブックにある「一連のプレー」という意味だそうだ。パリーグの小池会長が、翌日球場を訪れ直接バレンタイン監督に説明していたが、「成り行きという言い方は適切ではない」という趣旨の談話をだしていた。至極当然である。
 業界用語を公に説明するさいに使い続けていたこと自体に問題がある。意味が通じなくてもやっておけばいいという、事なかれ主義がまかり通っていたのだ。「伝える」ということはどうゆうことなのか、一から勉強しなおしなさい。ジャッジが正しいだけではダメなのです。伝わらなくては判らないのです。あのストライクのコールも私には不満です。横を向いてかっこつけて人差し指を小さくだす。大リーグの悪いところをまねすることはないのです。高校野球の審判のように、天に向かって高々とストライクのコールをしなさい。審判の仕事は大変だということはよくわかります。常に正しさを要求され、それでいて脚光をあびることもないのです。それでも、業界用語を公に使うなとどという恥ずかしいことはしないで欲しいのです。



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