Column No.127 (2005/05/25デイリースポーツ掲載分)
◎ 赤土のマドモアゼル

 学生時代に「パリのお嬢さん」という曲がヒットしていた。フランス語だと「マドモアゼル・ド・パリ」その優雅なメロディーがラジオから流れてくると、パリの娘たちはみんなお洒落で美しいのだと憧れたものだ。
 初夏の緑溢れるブローニュの森で全仏オープンテニスが始まっている。試合の主審が告げるアナウンスは全てフランス語だから、当然といえばそれまでなのだが、「マドモアゼル・愛・杉山」とアナウンスされる。スコアーを言うたびに「マドモアゼル何々」。「いいなぁ。やっぱりパリだ」
 ローランギャロスに集まった世界のテニス界のマドモアゼルたち、今大会は久しぶりに顔ぶれがそろっている。今世界をリードするのは、ロシア、ベルギー、アメリカ勢なのだが、残念なのはセレナ・ウイリアムズが足首のけがで直前に欠場したことだろう。
 そんな中で主役を占うとすれば、マリア・シャラポアとエナン・アルデンヌか、それとて絶対的とはいえない。男子は赤土のクレーコートを得意にしているヨーロッパ、南米勢が有利に思えるのだが、女子は必ずしもそうとはいえない。スペシャリストより、今季の出来、トップランキング、最近の調子を優先したくなる。今季の女子ツアー28戦で3勝がエナン、2勝はシャラポワ、クライシュテルス、ダベンポート、モレスモーらに分散している。しかも、ややこしくしているのは、ケガから復帰して3月から4月のビックな大会で連勝したクライシュテルスが今大会の直前に右ひざを痛め好調とはいえない。逆に低迷していたビーナス・ウィリアムスが直前の大会で久しぶりに優勝した。地元期待のモレスモーも5月のローマで勝ち、調子を上げてきた。但し、彼女はグランドスラムの幾つかのチャンスをプレッシャーに負けて逃し続けている。ダベンポートは世界ランクトップで今大会のナンバーワンシードなのだが、年齢やスタミナ、執着心から見ると、一押しとはいえない。去年のチャンピオンミスキナも今年は取りこぼしが多すぎる。となると、伸び盛りでハングリーさを持ち続ける日本人の大好きなシャラポワと実力者エナンの復活なのだろうか。今大会は珍しく中盤の4回戦が激戦になる。エナン、ビーナス、クライシュテルスが第十シード以降にいるのが大きなポイントになっている。日本からも浅越、杉山ら5人がそろって出場する。パリのマドモアゼルたちの熱い戦い、WOWOWでテニスのエスプリをお楽しみください。



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