Column No.125 (2005/05/11デイリースポーツ掲載分)
◎ 楽天を見守ろう

 交流戦が始まった。プロ野球ファンの関心と注目は高いようでご同慶のいたりである。中でも、楽天が3試合目で巨人に快勝した試合は痛快だ。「野球は巨人、司会は巨泉」と昔はいっていたが、球界の盟主として君臨していた巨人の今の不甲斐なさは、まさに新球団楽天に完敗した試合に象徴されるだろう。「バカ勝、セリ負け」が開幕から続いている。以前、藤田元司監督が「バカ負けはいいんです。この逆がいけません」といっていたのを思い出す。
 ところで、プロ野球ファンの関心と話題に上るのは、なんといっても楽天ゴールデンイーグルスだろう。たまに勝てば、「よくやった」、大敗しても、「あの戦力ではしょうがないからね」という会話になる。交流戦直前のロッテに快勝した試合を放送したのだが、この時、Jスポーツの放送席にV9監督の川上哲治さんをお招きし、新球団のティームづくりについて大所高所からのご意見を伺った。オーナーや球団首脳は「目をつぶって3年」は時間をかけること。新しい球団としての「チームカラー」の確立と「球団精神」をかかげ、ファンに喜んでもらえるような選手を作ること。そのためにには選手の素質を見出す首脳陣の眼も問われる。勝てないからといって、早々と首脳陣の入れ替えを行うのはどんなものだろう。選手を育てるには時間がかかるのだ。一番困るのは「負けが続くと、試合を投げてしまうことなのです。たとえ負けても、好感をもたれるような戦いをして欲しい」
久しぶりにNHK時代に戻った気分で川上さんとマイクをともにした。85歳になられたとは信じがたい大きな声と元気のいい笑い声、何よりもプロ野球への愛着に溢れる姿勢、昔と同じように、その日の放送の中で言いたいことをノートにびっしりと書き込んでくる衰えを知らぬ向上心、「まだまだ元気で核心をずばっとつく話ぶり」なのに、NHKはなんで手放してしまったのか、この辺にも昨今のNHKの定見のなさを感じるのは私だけではあるまい。
 楽天の今後については、ファンだけでなく、プロ野球関係者、オーナー会議の面々、コミッショナー、リーグ会長などそれぞれが大きな関心をもち、いいチームが作られるような方向にして欲しい。少なくとも、現在の戦力で戦えると判断し、参入させた責任があるのだから。もともと岩隈と磯部を除けば、オリックスと近鉄のプロテクト外の選手たちの集団である。若い選手を育てようにもベテランぞろいなのだ。大きな救いは川上さんも指摘のように「諦めずに懸命にプレーする姿」がそこにある。



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