Column No.123 (2005/04/27デイリースポーツ掲載分)
◎ 世界水泳にむけて

 久しぶりにプールのカルキの匂いを嗅ぎながら日本水泳選手権の取材をした。プールサイドで、かってのトップレベルの選手たちが次々と懐かしそうに話しかけてくる。緒方茂生、高橋繁浩、奥野景介、野口智博、選手生活の終わった彼らが水泳連盟の役員、コーチ、解説者などそれぞれの道で活躍しているのを見るとホットするとともに、「出来る奴はやっぱり、生き方も素晴らしい、あいつ等と付き合ってきてよかったなあ」と実感させられる。
 今の水泳界は至極忙しい。アテネ五輪が終わったと思ったら、もう今年は世界選手権の年だ。以前は4年に一度の大会だったのが、2年に一度の開催となっている。五輪を挟んで行われるわけだから、福岡の世界選手権、アテネ五輪、今年のモントリオールと三大会が連続して世界規模で開催される。北島康介の三大会連続ダブル金メダルもこのあたりから可能性が見えてくるのだろう。
 その北島は最初の200m平泳ぎで完敗の3位でこの種目の代表権を逃した。スタミナとペース配分が問われる200は練習不足を隠すことは難しい。スタート前、カメラが捕らえた北島の表情は自信に満ちたものではなかったし、場内コールに対するアクションもなく、「おや、なんだか違うな」という思いで私は見つめていた。もし、マイクの前にいたら、「絶対でない北島」とアナウンスしただろう。それが証拠に、50で勝った後の100m平泳ぎは両腕を大きく広げ、「オレは強い」という意思を示し、危なげなく優勝した。「ホットしている。内容は情けないが、反省の材料にはなった。夏に向かって調子を上げたい」とインタビューで答えていたが、プロスイマーとして、練習以外でも忙しかったろうし、風邪を何度もひくなど調整不足だった。これからは世界選手権に向けて合宿も続くので、練習に集中できる環境に身をおける。エースがティームをリードすることで国際大会の成果は違ってくるはずだ。マスコミは北島の金メダルを煽るだろうが、私は今度の世界選手権は日本ティームとしての層の厚さ、多くの種目でメダルや上位争いをして欲しいと願っている。殊に鈴木陽二ヘッドコーチが話してくれた自由型で世界と戦えることが「真の水泳ニッポン」の復活になるという大きなテーマである。リレーが国の強さを表すといわれる。男子の百は49秒台が絶対条件なのだ。
 この日本選手権では、20人が標準記録を突破した。かなり高い記録の設定だから、選考も判りやすいし、層の厚さを感じる。モントリオールの世界大会は7月の下旬、北国の夏は清涼感に溢れている。



--- copyright 2001-2005 New Voice Shimamura Pro ---
info@shimamura.ne.jp