Column No.116 (2005/03/10デイリースポーツ掲載分)
◎ 金メダルのツケ

 来年の冬季オリンピックはもうすぐそこまで来ている。ヨーロッパ、アメリカ、カナダなどの寒冷地では来年に迫ったトリノ五輪へ向けての各種大会が毎週開かれている。最近はフリースタイルスキーやスノーボードなど若者が夢中になる競技が注目を集めるようになり、五輪の人気も様変わりしたことを痛感させられる。
 夏季とともに、このところ日本の冬季五輪の成績もぐぅんと上昇している。先週のスノーボードのWカップでは、山岡聡子が今季の初優勝、通算の4勝目をマーク、成田夢露も3位に入り、種目別の総合優勝を濃厚にしている。スケートの世界ジュニアでも、織田信成が初優勝、来年はトリノ五輪に挑むチャンスが膨らんできた。日本のスポーツ界が世界で通用するようになってきたのは、明らかに資金面で裕福になり、闘う環境が整備され、優れたコーチングやトレーニングが受けられるようになったことがポイントになっている。国際大会や海外の恵まれた環境での合宿や遠征を数多くこなし、世界のトップクラスと、もまれる機会が豊富になったからであろう。
 しかし、選手もコーチも、競技団体もいいきにってはいけないのだ。2月7日の夜、長野五輪フリースタイルスキー女子モーグルの金メダリスト里谷多英選手が泥酔して警察に保護されたことが明るみに出た。真偽のほどは何ともいえないが、店員につかみかかったり、物を壊したり、連れの外国人コーチと「公然わいせつ」におよんだと、週刊誌に報じられた。里谷は五輪出場のチャンスとなる世界選手権への派遣をスキー連盟から取りやめるよう言い渡された。
 当然であろう。金メダリストだからといって、いい気になってはいけないのだ。メダリストやオリンピック選手はいつも誰かに見られ、注目されているのだ。これは、有名税ともいえる宿命である。いわせてもらえば、「たかが金メダル」なのだ。確かに、金メダルをとったその日一日とそれまでの長い道のりの努力は永遠に讃えられるものだ。しかし、金メダルを鼻にかけて謙虚な心を忘れてしまうから、ご乱行に及ぶのだ。厳しい練習が続くと、息抜きやリラックスの時間が欲しいのはよくわかる。それでも、世間から注目されている、いわば「公人」なのだ。このことは、本人だけでなく、スキー連盟、所属のテレビ局も指導を怠っていたということになる。マスコミも企業もスポーツ団体もメダリストをちやほやさせすぎる。たかが金メダルというと言葉は過ぎよう。されど金メダル。だから、自らに厳しく、身を律して欲しい。



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