Column No.110 (2005/01/26デイリースポーツ掲載分)
◎ 夢はこれから

放送席より丸山淳一さんと


 百周年の記念大会で盛り上がるテニスの全豪オープンも、いよいよ今日からベスト4の激突になる。今年は男女とも上位シード選手がいい内容で勝ち進んできた。四回戦以降にほとんどのトップ選手が残ったのは近年でも珍しい。
 日本人選手は男女とも三回戦に進めなかったが、憧れのセンターコートに登場し精一杯のプレーを見せた選手がいた。それは、杉山愛でも浅越しのぶでもなかった。厳しい予選から登場し、三勝をあげて本選出場を果たした鈴木貴男と中村藍子だった。
 低迷の続く男子はグランドスラムでほとんど関心をもたれていない状態だったが、予選から好調の鈴木は一回戦で米のギャンビルを「自分のテニスができた」というサーブアンドボレーで破り二回戦に進むと、世界NO1のロジャー・フェデラーとセンターコートで対戦した。しかも、注目度の高いナイトセッションである。放送席の私もたびたび興奮し、叫び声と感嘆の声をあげるほどの見事なファイトだった。王者フェデレーが、前半の試合では見せたことのないガッツポーズや雄たけびを上げたほどだった。こまねずみのように激しく動き回った鈴木に満員の観衆はフェデラーに劣らぬ拍手を送ってくれた。「自分の財産になった。いろんな人に声をかけてもらえた」という鈴木、地元のTV局はスーパーショット特集に何度も鈴木を登場させていた。
 中村も予選三試合を勝ち抜き本選登場、初めて一回戦を突破、二回戦は地元豪州期待のモリックと対戦、こちらも夢のセンターコートだった。初出場、初勝利、初のセンターコートと素晴らしい経験をつんだ。モリックに力負けした中村だが、「また、ここに戻りたい」と手ごたえをつかんだ笑顔だった。
 全豪にはもう一つの戦いがある。大会の後半に、ジュニアの試合が始まった。世界のトップはみんな若い頃、ここでスタートしている。14番コートに中学生の森田あゆみが登場、すでに昨年の全日本の活躍で期待されており、コートサイドには50人をこす日本人が応援した。スロバキアの第14シードを相手に森田は立ち上がり緊張して硬かく第一セットを落としたが、次第に持ち前の強打が相手コート深く決まり逆転、見事にジュニアの全豪の初勝利をマークした。電車が音をたてて通過する14番コート、テニスセンターの片隅からあゆみちゃんの世界を見据えてのテニスがスタートした。いつの日にか放送席から彼女のテニスを語りたい。私は若くないのだから、そんなに長くは待てないが・・・。



--- copyright 2001-2004 New Voice Shimamura Pro ---
info@shimamura.ne.jp