Column No.106 (2004/12/15デイリースポーツ掲載分)
◎プロへの夢


 先週の土曜、来年スタートする四国独立リーグのトライアウトを取材した。東京・世田谷区の閑静な住宅街の中にある駒澤大学の祖師谷グランド、独立リーグを主催する石毛宏典さんが若いころ汗を流した場所である。
 このトラアウトは第一回を香川・高松で五日に行い172人の若者が参加している。四国の独立リーグへ関東の選手がどの程度関心をもっているのかと半ばたかをくくってでかけてみたのだが、練習グランドで「感動」を覚えたのは久しぶりだ。
 グランド一面に何十、何百種類ものユニフォームがボールを追い、ダッシュし、全力投球を行っていた。何人の若者なのか分からないほど大勢いる。受験を示すナンバーがその数の多さをあらわしている。少し落ち着いてユニフォームを見ると高校、大学、社会人野球のお馴染みのものも数多く見かけた。中には野球帽をかぶらず毛糸の帽子の選手もいる。茶髪、金髪、坊主。でも、姿や形が違っても、皆「野球が大好きでたまらない」と顔に書いてある。外国人もいれば、甲子園の優勝投手、準優勝のメンバーだった選手もいる。アメリカでトライアウトを受けた選手もかなり参加していると聞かされた。
 野球を仕事にしたいと願っている若者がこれほど多くいるのだ。50メートル走や遠投に必死に挑む若者の姿を見ているうちに、驚きというより、「ある種の感動」を覚えた。「もっと若者の夢を育てるチャンスがあっていいはずだ」「今までのプロ野球は本当に応えていたのだろうか」少なくとも石毛さんが独立リーグという構想でプロ野球界に投じた一石は波紋となって広がり、野球好きの青少年の心を動かしたのは間違いないのだ。
 朝、8時過ぎの受付から夕方まで行われたトライアウトに受験した選手は344人を数えた。関心の高さはTVもきていたし、新聞、雑誌の取材も多かった。プロ野球界の先輩も顔をみせ審査にあたっていた。広島カープで活躍した西田さんも独立リーグの指導者になるので、試験管としてノックバットを振っていた。
 久しぶりに藤田元司さんにもお会いした。四国。愛媛の出身藤田さんはアドバイザー役を引き受けられた。「こんなにたくさんの青年がくるとは驚きましたね。選ぶのは大変だ。でも楽しみですね。あの17番の子、いい投げ方しているねぇ」
 勿論、石毛さんは大忙し、手ごたえを十分に感じている様子だった。受験生の一人がつぶやいていた。「夢を見させてもらえました」
 この後、19日札幌、23日大阪、26日名古屋で行われる。夢を追う若者は千人は遥かに超えるだろう。



四国:独立リーグ(IBLJ)




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