Column No.92 (2004/09/01デイリースポーツ掲載分)
◎五輪の主役

 まれに見るメダルラッシュのアテネ五輪が終わった。そして、今回のアテネは「水泳ニッポン、マラソンニッポン、柔道ニッポン、体操ニッポン」だった。加えて女子レスリングの全階級メダルもよかった。日本の活躍だけでなく、会場の雰囲気や盛り上がりに五輪での伝統スポーツ、世界の中での普及度が感じられたのである。
 そこへ行くと、野球大好きの日本にとって五輪ではまだまだ新興スポーツの域を出ていないと知らされたのではなかろうか。
 日本のトッププロオールスター軍団がプレーした舞台は小さな球場、空席の目立つスタンドだった。日本のスター達がこんなに観客のいないところでプレーしたのは、恐らく高校時代の練習試合以来ではないだろうか。
 「何が何でも金メダル」と色紙にサインしたのはアテネ五輪野球代表ティームの宮本主将である。アマチュアスポーツの祭典といわれた五輪は、いまや競技によっては世界のトップが参加する大会になってしまった、これが今のIOCの方針なのだ。
 心やさしい宮本主将は「アマチュアの夢を奪ってまでプロだけで行くのだから、金メダル以外は考えられない」と並々ならぬ決意でアテネへ向かったのだ。
 アア、それなのに、長嶋ジャパンは準決勝でオーストラリアに惜敗してしまった。予選リーグでも負けているのだから相手の戦略の方が上だったのは間違いない。それでも、私は日本が実力bPだと思っている。しかし、これが五輪なのだ。「世界記録保持者でも勝てないのがオリンピック」とよくいわれる。五輪代表選手は4年間かけて「その日、一日のために」己を磨き、苦しい練習に耐えて「その日」を迎えるのだ。プロのすごい技術を持っていれば、集まって一週間でティームが出来ると考えるのは間違いだろう、今まで、アマチュアの全日本は長い年月をかけ五輪ティームをつくってきた。野球のティーム作りとはそういうものではなかろうか。アマチュア野球連盟もこの敗戦をプロのせいにせず、次は野球の原点に帰った「五輪ティーム」を作ってもらいたいものだ。



--- copyright 2001-2003 New Voice Shimamura Pro ---
info@shimamura.ne.jp