Column (2004/08/31デイリースポーツ掲載分)
アテネ・リレーエッセイ〜閉会式の選手は勝者も敗者も幸せそうだった

 最高の結果を出せたアテネ五輪が閉幕した。日本のメダルラッシュに堪能しながら「日本は強くなったものだ」と何度も同じセリフを呟いたものだ。閉会式は仕事先のニューヨークで見た。
勝者も敗者もやり遂げたすがすがしい笑顔に溢れている。舞台芸術のような素晴らしい演出の開、閉会式は歴史と文化の伝統国ギリシャならではだった。
 私の閉会式の想いでは28年前にさかのぼる。若かった私はモントリオール五輪の閉会式のラジオ担当だった。競技の実況の後、深夜の閉会式リハーサルの取材に行った時のことである。
 真っ白なケープをまとってダンスを踊るカナダの女子高校生が待ち時間に私たちの放送席を取り囲んだ。私がノートにメモする漢字が珍しかったのだろう。放送席のまわりに長い列ができた。
 そのうち彼女達はフワフワした白いケープにサインをせがんだ。西田アナウンサーと私は彼女たちの背中にせっせとペンを走らせた。本当は背中ではなく胸の方がよかったのだが・・・・・
 閉会式当日、彼女たちの踊っている最中にストリーキングが“珍入”した。素っ裸の男である。しかし、彼女たちは驚きの声を上げることもなく躍り続けた。
 「さすが、カナダの女子高校生、慌てず、騒がず」と、私はアナウンスした。なにが“さすが”なのか思い出してもおかしくなる。
 いまは、40台半ばの彼女たちはどんな人生を送っているのか、閉会式をニューヨークのホテルで見ながら、遠い日を思い出している。



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