Column No.84 (2004/06/23デイリースポーツ掲載分)
◎敵地での戦い

 「ニューヨークの皆さんにお願いします。ミケルソンにだけ応援しないでほしいなぁ。」全米オープンゴルフで4位タイと大健闘をみせた丸山茂樹選手がホールアウト後のインタビューで笑いながら語っていた。丸ちゃんらしく、やや冗談っぽく言っていたが、本心だろう。全米オープンには世界のトップクラスのゴルファーが「優勝」の夢を描いて集まってくる。予選なしで本大会に出られる選手は本の一握り、厳しい予選会に勝っての名選手もトライしてくる「世界一」の大会である。ゴルフのメジャーは4つあるが、ゴルフの中心がアメリカであることを考えれば、選手権としては全米オープンと言わざるをえまい。マスターズは招待試合であって選手権ではない。世界に門戸を開いているとはいえ、アメリカ人にとってはナショナルチャンピオンシップだ。
 最終日にミケルソンと南アフリカのグーセンの一騎打ちになった時、大ギャラリーの全てがミケルソンに勝たせたいと思ったことはよく分かる。ミケルソンが逆転して優位にたった直後のダブルボギーでアメリカ中のゴルフファンが失望しタイトルを南アフリカに奪われる屈辱を味わったことだろう。盛り上がった今大会が、18番でチャンピオンになろうとするグーセンを迎える拍手のなんと小さかったことか・・・・・
 それまで、ミケルソンのバーディーに地鳴りのような大歓声で讃えたギャラリーとは別の人々になってしまった。
 無理もないのだ。ファンには勝ってほしい選手と勝たせたくない選手がいるのだ。つまり、丸チャンはそういう状況の中でメジャーを戦っているのだということだろう。愛敬のある丸チャンはアメリカでも人気があり、声援をもらっている。しかし、今度の最後の場面がグーセンでなく、丸山選手だったとしても、全米オープンなら同じだろう。だから丸チャンはインタビューでそういったのだ。
 グーセンのピンチでの強さは常に敵地で戦ってきたからなのだろう。追い込まれたパットはことごとく沈めた。すごい精神力だった。丸チャンのアメリカでの戦いも同じだろう。
 最後にいいたい。日本のマスコミもスーパースターに勝たせたがる。タイガー、タイガーとまだ騒ぎ、だめならミケルソン。ファンは仕方がないにしても、マスコミや解説者は依怙贔屓(えこひいき)してほしくないものだ。



--- copyright 2001-2003 New Voice Shimamura Pro ---
info@shimamura.ne.jp