Column No.69 (2004/03/04デイリースポーツ掲載分)
◎ 出会いのキャンプ


私、李東勲さん、中曽根俊さんと・・はいチーズ!


 オープン戦に突入したプロ野球だが、キャンプ廻りでは各地で心に残る出会いがあった。最後の鹿児島・ロッテで、二人の若者が私を待っていてくれた。中曽根俊さんと李東勲さん、二人は揃って今年からロッテの通訳に就任した。
 中曽根さんは、私がNHK時代にMLBやNBA中継の時の通訳、非常にクレーバーで優秀だった。通訳という仕事は、単に言葉を訳すだけではなく、その競技や選手などに精通していないと微妙なニュアンスを訳せない。級密で行動的なバレンタイン監督のお眼鏡にかなって監督づきになったわけだから、バレンタインも彼の素晴らしさを見抜いたのだろう。「ハ〜イ、ボビー、元気ですねぇ、どうですか?」と挨拶すると、懐かしそうに思い出してくれた。すかさず、中曽根さんが「NHKで私の先生でした」と言ったものだから、ボビーは目を丸くして驚いてくれた。「キャンプはOKよ」
 そこへ、56発男・イースンヨプの韓国語通訳の李東勲(イードンフン)君が嬉しそうに「先生、待っていました。会いたかったです」と、満面の笑顔で挨拶に来た。「久しぶり、いい仕事に就けてよかったねぇ。これからは先生じゃないから、島村さんにしてよ」「はい、先生、でも先生としか言えません」李君は私が一昨年、国士舘大学の講師としてスポーツ文化論を教えていた時、大学院生だった。どうしても受講したいと、単位に関係なく熱心に聴講した優秀な生徒だった。彼の卒業論文は「韓国プロ野球に果たした在日韓国人選手の役割に関する研究」という立派なもの。国に帰り、プロ野球に関する仕事に携わろうとしていた矢先にイースンヨプに認められ請われて再び来日したのである。思いがけない出会いはひとしお嬉しいのだ。
 鹿児島の夜、必ず寄る「鳥家」という焼き鳥屋さんに顔を出す。テーブルに珍しい点字のメニューがあった。店主の山下良一さんに聞くと、「目の不自由なお客さんが、美味しかったので自分で注文したいからと、つくって来てくれたんですよ」と嬉しそうに語る。点字メニューのあるお店は全国でも珍しいはずだ。山下さんの優しさが伝わってきて心豊かにキャンプが締めくくれたのだった。



「鳥家」の点字メニュー


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