Column No.64 (2004/01/28デイリースポーツ掲載分)
◎オーストラリアの復活は?

 1月26日、オーストラリアは建国記念日だった。キャプテンクックがシドニー湾にイギリスの旗を立てた記念日がナショナルデーとなっている。各地で記念のスピーチやセレモニー、バーベキューパーティーが行われ、建国を祝い休日を楽しんでいた。
 テニスの全豪オープンでもオーストラリアにとってこの日は特別の日になった。新聞の見出しは「オーストラリアデイになるのだろうか?」「オーストラリアのペアーは前進出来るのか」と書きたてた。今年はヒューイット、フィリポーシスの2人のエースが揃って好調で連日新聞に2人の大きな顔写真が並んでいる。テニスの伝統国のオーストラリアだが、実はこの全豪オープンに関していえばこのところずっと期待に応えることが出来ないのだ。一つにはファンの熱狂的な声援が逆にプレッシャーになっているのかもしれない。
 ウィンブルドンと全米のチャンピオンのヒューイット、全米とウィンブルドンに準優勝の実績を持つフィリポーシスの2人が、揃ってこの全豪では4回戦の壁を突破できないのは不思議な現象だし、ホームコートの利が逆作用しているとしかいいようがない。全豪は1905年にナショナルオープンとしてスタート、1969年から現在の世界の選手が参加するグランドスラムになった。ロッドレーバー、ローズウォール、ニューカム、マーガレットコートら数々の名選手を輩出したオーストラリアだが、全豪のチャンピオンは男子は1976年、女子は1978年以来途絶えている。アリーナの前に並ぶ25人の名選手の胸像はこのところ「しっかりせい」と叱咤激励の表情に見えるのだ。
 この日、センターコートのロッドレーバーアリーナには2人が揃って登場した。もちろん熱狂的なテニスファンはスタンドを埋め尽くし、顔にペインティング、オーストラリアの国旗を振り、ピンチになると国家を斉唱して2人を励ました。
 私は最初のフィリポーシス戦を放送した。相手はモロッコのベテラン、イシャム・アラジ、この大会に久しぶりに動きのいいアラジだったが、精神的にも安定してきたフィリポーシスが振り回されるとは思えなかった。しかしフィリポーシスは硬かった。豪快なショットは影を潜め、アラジに完敗した。まさかの敗戦のあとヒューイットはシードUのフェレロと対戦、第1セットをとったのに、その後ショットのよくなったフェレロに逆転されてしまった。また、2人とも4回戦の壁に撥ね返されたのだ。こうして伝統国は後半戦に入ったところで誰もいなくなった。
 帰りに銅像の名選手たちの顔を覗いてみた。皆一様に後輩の不甲斐なさに怒った顔をしているように見えたのだが・・・・・




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