Column No.55 (2003/11/19デイリースポーツ掲載分)
◎Qちゃん敗れ、混沌

 「尚子、惨敗、五輪ピンチ」「高橋、失速2位」「アテネ?」と新聞の見出しを飾った日曜日の東京国際女子マラソン。TVも新聞も関係者もファンも、いやコーチの小出さんまでもが勝利と高記録を疑わなかったQちゃんの走り、結果は小出さんが語った「マラソンは怖いね」の一言につきるのだ。
 この7年間の6レースで、全て勝ってきたし、期待された五輪やアジア大会でも結果を出したのだから、ライバルのいないこのレースは「二重丸の勝ち」と誰もが思っても仕方がないだろう。私も確率は高いと思っていた。ただ、気になることが二つあった。
 一つは当日の天候だ。コースの近くにいた私は暑さ以上に乾いた強い風が記録には大敵だと直感した。飛ばしすぎれば軽量の高橋には疲労が蓄積されるのではないか?と。
 もう一つは、言い難いことだが、敢えて言わせてもらえば、心にすきがあると見ていた。確かに素晴らしい結果を出してきた。誰もが認めている。でも、小出さんの発言に「ちょっといい気になりすぎていないのかなぁ」と感じられることがある。スポーツはどんな競技でも何が起こるかわからないのだ。予想通りにいくことの方が少ないのだ。ましてや、限界まで戦うマラソン、本人は予測することが怖いのだ。十分に準備が出来たとしても、その通りにいかないのがレースである。そう考えれば、高橋尚子にとって、初めて思い通りに行かないレースだったのだろう。でも、失敗してよかったのだ。成功し続けると「いい気になり続ける」し、「謙虚さ」を忘れてしまう。
 もう一つ気になったことがある。負けたら笑顔を無理につくることはない。もっと悔しがって欲しかった。マスコミやコマーシャルに慣れすぎると、気づかいが先にたって、飾ってしまうのだろう。見ているほうが辛くなる。
 選考レースはあと二つもある。TVやスポンサーの関係で日本陸連は、相変わらず選考を一本に絞らない。この後の2レースの記録と内容如何によっては、高橋の五輪の可能性は残っている。なんたって、2位、日本人トップである。選考のゴタゴタにならぬよう、次回からは収益より、すっきりとした一本勝負にしてもらいたいのだ。



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