Column No.49 (2003/10/15デイリースポーツ掲載分)
◎日本シリーズ考

 ようやく日本シリーズの週を迎えた。酒の肴になるくらい、結構雑談の座持ちには格好だ。それほど始まる前までに日時がありすぎる証拠だろう。
 ここ数年の日本シリーズは面白くない。今年こそ7戦までもつれ込む白熱のシリーズを期待したいのだ。去年の西武は優勝が決まってから34日後にシリーズを迎えた。終盤、故障の松坂の復帰にこだわったのが敗因となった。シリーズに向けた調整の難しさが日本にはあるのだ。米のように一気にWシリーズに向かう方が、たとえ疲れていても力と気持ちを充実させやすいのだろう。
 シリーズは94年以来9年間は6戦3回、5戦5回、4戦1回である。最後の7戦は93年まで遡る。76年から93年までの18年間で7戦までいったのは、何と11年もあるのだ。名勝負はこの年月に多い。私は7戦を担当することが多かったのはラッキーだったとつくづく思う。「江夏の21球」とドキュメンタリーにもなった9回無死満塁からのミラクルは、79年の広島−近鉄戦だった。前年のヤクルト−阪急の7戦目は大杉のホームランを巡って、阪急上田監督の抗議は1時間19分も続いた。こうした修羅場を含め、7戦までもつれ込むと、毎試合のようにドラマが展開していくのだ。記憶しているだけで、私は5回も7戦のマイクを握ることが出来た。
 シリーズの流れをつかむのはなんといっても1戦、2戦にある。50年にシリーズが始まって53回の歴史で、日本一になったティームが初戦を落としたのは18回、2戦を落としたのも18回という数字は先手必勝を証拠づけている。連敗後の逆転日本一は58年の西鉄・三原マジック以来、6回しかないのである。
 ファンにとっては7戦まで見たいものだが、一気に短期決戦の流れをつかみ、勝負を決めるのが極意なのだろう。V9時代の川上監督は7戦までいったことがなかった。5戦5回、6戦4回で決着をつけている。以前聞いた川上さんの言葉を思い出した。「私は臆病ですからなぁ。とても7戦など怖くて出来ません。ワッハッハァ」だと・・・
 王さんにも、星野さんにも、どちらにも勝って欲しい複雑な心境でシリーズを待っている。



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