甲子園で優勝の舞をしたあと、星野監督は柔和な笑顔で選手たちの喜ぶさまを見守っていた。TVを見ながら祝福を送っていた私は、受話器を取り上げ、米・ボストンへ国際電話をする。「和華ちゃん、おはよう!起きてた?」「はい、おじさま!」と元気な声が返ってきた。「お父さん、今、胴上げされたよ!」「本当ですかぁ?よかったぁ」「いま、甲子園のTVを見ているところ、お父さん、嬉しそうで優しい顔しているよ」「そうですかぁ」としんみり。「あっ、いま日本からのTVが始まりました」 星野監督の分身、姉の千華ちゃんは優勝の瞬間と胴上げを見届けたはずだが、妹の和華ちゃんはこの8月から、ご主人の転勤でボストンに住む。かわいい孫・仙太君ともしばらくの別れが始まっていた。
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