Column No.42 (2003/08/20デイリースポーツ掲載分)
◎渾身の一打

 全米プロゴルフ選手権でシャーン・ミケールが見せた最終18番のセカンドショットは、85年の歴史を刻む大会の中でも語り継がれる一打となった。ゴルフ界にまた新しいヒーローが誕生したのだ。マスコミやファンはメジャーが始まると「タイガー、タイガー」とまるでタイガーが優勝するのが当たり前のように騒ぎ立てる。
 先週、私は不調のタイガーが立ち直れるのかという視点で「主役はタイガー」と書いたが、伏兵の優勝もあると述べたように、タイガーの優勝の確率は少ないと見ていた。案の定、ティーショットは曲がりっぱなし、深いラフから苦戦するタイガーのいらついた顔ばかり見ていた。たまに、フェアーウェーに当たってもセカンドはバラバラ、タイガーのデビューから放送をしてきたが、こんなに悪い下手なタイガーを見たのは初めてである。やはり、懸念されたドライバーが大きく曲がることから始まっているのだろう。最終日の最後に見せた2つのいいショット、来週のワールドシリーズにつながればいいのだが・・・
 タイガー不在でも面白い最終日だった。ミケール、キャンベル、クラークと日本では無名に近い選手が緊迫した優勝争いを展開してくれた。キャンベルが今年、優勝こそないが、米ツアーでランク13位にいるので知られているが、ミケールを知ってる人は、かなりの米ツァー通といえる。
 米でも無名に近いからなのか、現地の放送局は彼の両親の住む家にカメラを持ち込み、一喜一重を映し出していた。長い間ゴルフ中継を米からやってきたが、コースと自宅を結ぶ二元中継は始めて経験した。彼の名前の日本語の表記さえ日本のマスコミで統一されていないのだ。WOWOWではシャーン・ミケールと発音させてもらったが、ショーン・ミケール、ショーン・マキール、シャーン・マキール、などとマスコミによって発音と表記はまちまちだ。放送席の前に「シャーン・ミケールと大きく赤字で書いて名前をアナウンスするたびに確認して言ったのだが、それでもマキールと何度か言ってしまったようだ。
 34歳でやっと花が咲いたミケール、見慣れたタイガーのガッツポーズの優勝より、弁護士の妻とおなかの子供に祝福を贈ったミケールの喜びの方が、私には人生が感じられて心を打たれたのだった。

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