Column No.39 (2003/07/30デイリースポーツ掲載分)
◎強化実った競泳陣

 世界水泳選手権の北島康介選手の快挙に、水泳アナウンサーだった私は、ただただあきれ驚くしかなかった。10回の世界水泳のうち、4回を実況してきた私だが、五輪と違い私の実況は銀メダル止まりだった。日本選手の五輪、世界選手権で世界新と金メダルのダブルタイトルは史上初である。しかも、100と200平泳ぎは、まったく別のものといわれている。この両種目に対応できること自体が驚異でもあるのだ。

 スーパースターとは、期待された時に実力と勝負強さを発揮し、その期待に応えられる者をいう。彼は、まさにその一人だろう。スピードと持久力という異質のものをマスターした技術の素晴らしさとともに、大舞台で発揮された心の強さに、改めて敬意を表したい。「レースは筋書きどうりにはいかない。陸上も水泳も同じだ。その瞬間に、あらゆる展開にどう対応できるか」に勝負の本質がある。
 いずれも夢の記録だが、次は58秒台、2分8秒台も視界にとらえることが出来よう。次のアテネ五輪はチャンピオンとして臨まねばならない。「世界記録保持者が勝てるとは限らないのがオリンピック」と、私は何度も語ってきた。鈴木大地も岩崎恭子も世界記録保持者を破っての金メダルだった。スーパースター北島康介に一層の精進を期待したい。
 山本貴司、と稲田法子の銀と銅には心からの祝福を送りたい。彼らの国際舞台を私は何度も伝えてきたが、メダルに今一歩で届かなかった。山本はバタフライで「四番目の男」といわれ続けたが、泳ぎ続けることの大切さを見せてくれた。妻の「人気のすずちゃん」も脱帽のはずだ。 
 稲田は中二トリオで出場した思い出のバルセロナでメダルをつかんだ。何かの因縁だろう。あの時、恭子ちゃんは史上最年少金メダル、稲田は健闘したのに12位で忘れられた存在だった。一度、水から上がり、忘れ物を取り戻しに来たプールで「まだ、燃え尽きていない」ことを証明してくれた。北島の世界新は別格だが、二人の「泳ぎ続けた意思」に胸が熱くなることを覚えた。
 このティームをリードした上野広治ヘッド以下、コーチ陣のティームワークの勝利も讃えられる。が、アテネまでこれからが「本当の勝負」になるのだろう。



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