先週の土曜日(6月28日)、広島からの中継で1試合4本塁打の日本タイ記録を放送をした。歴史に残る快挙を達成したのだが、本塁打打者ではないヤクルトの古田だったのが興味深い。
ホームランは狙って打つという言い方もあれば、ホームランはヒットの延長、狙って打てるものではないとも言われる。どちらも真理だろう。飛ばす力を天性で持っている人が本塁打打者なのだ。古田本人もインタビューで答えたように、「信じられません。僕はホームランバッターじゃないんでね」というのが、偽らざる答えだろう。
第1打席、長谷川の外角速球を右翼ギリギリの経済的ホームランに始まり、四球を挟み第3打席は横山から左中間へライナーでつき刺した。実況していた私は、フェンスに当たったのかと錯覚、一瞬言葉を失った。第4打席の内角攻めを、右脇を締めて乗せた一打は芸術品だった。あの山内弘さんのシュート撃ちを彷彿させた。3ホーマーすると、ディレクターが記録を調べてくれた。セ・リーグでは岩本義行さんと王さんしかいない。
第5打席、左の西川の外、外のあと内角のスライダーを古田は読んだ。打球は高い孤を描いてレフトボール際に上がった。一瞬ファールかと思った。だが、切れずにポールを巻いた。この瞬間に王貞治以来セ・リーグで39年ぶりに1試合4ホーマーが記録された。古田はセカンドベースを回る時、小さくガッツポーズをした。控え目で好ましかった。パワーで打った本塁打ではない。すべて読みで打った芸術品のようだった。
岩本、王、ソレイタ、ウイルソンに次ぐ5人目、古田以外は皆、ホームラン打者である。第1号の「神主打法」といわれた岩本さんは、広島県三次市で92歳の今もご健在と人づてに聞いた。「怪人ソレイタ」は、以前に「亡くなった」という外電を読んだ記憶がある。
解説をした秦真司さんがしみじみと語った。
「この場に立ち会えて光栄でした」そう、古田入団で秦さんは捕手を追われ、外野に代わった好打者だったのだ。私にとっても1試合4ホーマーは初の(実況放送)経験なのだ。 |