Column No.32 (2003/06/11デイリースポーツ掲載分)
◎虎キラー誕生か

 「何で佐藤にやられるの?」
 神宮の三塁側ベンチで開口一番、嫌味な挨拶をすると星野監督、すかさず「佐藤の生活の面倒みとるんや」と居並ぶ記者団にも聞こえるように言って笑わせる。その後小声で、「全部、手元で小さく変化するんや」
 昨年秋、西武を解雇されてヤクルトにテスト入団した佐藤英樹投手が5月9日の広島戦で3年ぶりに先発し、7年ぶりの勝利をあげた。日数にすると2457日ぶりになる。この2年間の西武時代に1軍の登板なし、「佐藤ってどんな選手だっけ」
 93年に入団の年、24番の背番号をもらい期待され、開幕4連戦で新人王の候補にさえなった。翌94年は7勝をマークした。しかし、球威はあったが、突然コントロールを乱し崩れることがあった。このイメージが佐藤英樹選手だった。
 星野監督時代に成績は落ち、99年西武にトレードされた。4年間鳴かず飛ばずで、ヤクルトがテストで採用してくれた。そして佐藤は静かに変身を計っていたのだ。スピードからカット、スライダー、シュートの変化に生きる道を求め、コントロールを磨いたのだ。
 7年ぶりの勝利のあと「古田さんのサインどおり投げました」と勝因を語ったが、家に帰ると息子が紙で作ったメダルつきの首飾りをかけてくれたそうだ。勝てなかった7年間、妻と子、家族の支えが佐藤を励まし続けたのだろう。
 5月末の松山での阪神戦、変身した姿で星野監督への恩返しは変化球で10の内野ゴロのヤマを築かせた。
 「自信になります。星野さんびっくりしていませんか」
 そして、神宮でも7回を0点に押さえ、阪神戦連勝、今季は負けなしの4連勝である。
 一緒に放送しているJSKYスポーツの塚田リポーターのインタビューに「先発向きの自分を首脳陣が認めてくれているので、期待されている充実感がある。古田さんに受けてもらい、投球の会話をしているみたいです」
 阪神打線よ、次は会話を静止せよ。さもないと、佐藤は本当にキラーになる。二度あることは三度あるというじゃないか。



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