Column No.21 (2003/03/26デイリースポーツ掲載分)
◎センバツによせて

 選抜高校野球の熱戦が続いている。20年近くも「春はセンバツから・・・」とマイクを握ってきた私だが、離れてみると興味を失っている自分に気がついて、開会式のTVを観戦した。このところの傾向とはいえ、スタンドに空席が目立ち、正直いって盛り上がりに欠ける。しかし、私が開会式を担当していたころにくらべると、セレモニーは高校生が主役、場内の司会、演奏、合唱、君が代の独唱など、全てが高校生。殊に入場行進の司会を務めた栃木県の盲学校の生徒、我妻雄紀君のアナウンスには驚き、かつ感銘を受けた。行進する選手の姿以上に、私は場内のアナウンスに耳をそばだてていた。
 大会役員が肩を叩くのを合図にティームを紹介していたが、落ち着いた良く透る声、トチリやつまったりすることもなく立派な司会ぶりだった。発音や発生が不明確でタレント化した現役アナウンサー、殊に女子アナは見習った方がいいだろう。
 君が代を独唱した富山県の小林大佑君は、おそらく本格的に声楽を勉強していると思うが、堂々たる歌声を甲子園球場に響かせ開会式を盛り上げていた。
 行進の選手達は、年々大きくなり、腕の振りが手の甲を上にして振るスタイルがほとんどになっていた。
 阪神タイガースのキャンプ地・沖縄の宜野座高校の選手達の底抜けに明るい笑顔、スタンドの蓮池薫さん夫妻の穏やかな安堵の笑顔が印象深かった。折から米のイラク空爆が開始され、拉致事件の被害者の蓮池さんがスタンドから拍手を送る甲子園、ひとしお平和、平穏の価値を実感する「春・センバツ」である。ついでながら、マスコミが蓮池さんをスター扱いにしているように思えるのは私だけなのだろうか。
 ところで、NHKの開会式の放送をじっくり聞いたが、情感が伝わってこないのはなぜなのだ。私も開会式はコメントを用意した。しかし正しく読んでいるようでは、実況とはいえない。君たちは放送席で何を感じ、何を伝えたいのだろう。声の出し方、心の伝え方、プロの技、今のNHKは切磋琢磨に欠けている。



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