Column No.19 (2003/03/12デイリースポーツ掲載分)
◎アマの頭脳プロへ

 アマチュア野球界で数々の成果をあげた山中正竹さんが、55歳にして法大教授の職を辞し、横浜ベイスターズのフロントに入り、既に活動を始めている。今週の月曜日、10日には野球界やマスコミの関係者が集まって、「感謝の夕べ」が盛大に行われた。
 山中さんは法大時代、48勝の最多勝、怪物江川ですら1勝届かなかった記録保持者である。山本浩二、田淵らと法政の黄金時代を築き、社会人野球・住友金属でも、選手監督として数々の優勝、若い頃から「真剣・熱中・忍耐」をテーマに指導者の道を歩み、選手を育て続けた。今、プロ野球の各ティームで活躍する主力選手は、ほとんどがアマチュア時代に山中さんの指導のもと、五輪や世界大会で戦い、影響を受けている。放送の解説者としても、ソフトな語り口の中に整然とした理論と鋭い指摘を展開した。甲子園の高校野球、五輪などで私は多くの名場面をともに語らせてもらった。「もしこの人がプロの世界に入っていたら、どんな活躍をしたのだろう」と想像したものだ。少なくとも、同世代の大学時代のライバルとはひと味もふた味も違う指導者になっていたはずだ。
 パーティで、ステージに呼ばれた私は、久しぶりに山中さんにマイクを向けた。アトランタ五輪の銀メダル戦以来だろう。「あす、横浜ー阪神戦の実況をするんですが、今だけ、フロントから解説者に戻ってみてください。横浜は大チャンス打線だそうですが、相手の阪神打線は何ていったらいいでしょうねぇ」山中さんはすかさず答えた。「星野監督は仙ちゃんだから千チャンス打線ですかねぇ」。打ち合わせしたわけでもないのに、言って欲しいことを答えてくれるこのカンのよさ、今度はプロ野球のフロントとして明快な組織づくりをしてくれることだろう。
 最後の挨拶で山中正竹さんは、こう締めくくった。「プロとアマは難しい問題が山積している。アマの経験者がプロの世界で何かを発進したいのです」。その「何か」をこれから山中さんは求めていくのだろう。国際的な視野でプロ野球を改革して欲しい・・・・・私の願いです。



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