スイミングマガジン・「2011年10月号」掲載記事
島村俊治の「アスリートのいる風景」(10月号)
◎ 夢を壊さない為に

 八月中旬、鳥取県倉吉市の私立の教育研修大会に招かれてお話に出かけた。今から四十八年前、新人のアナウンサーとして鳥取に赴任した私にとって、懐かしい思いでの地である。倉吉市は鳥取県の中部、天女の羽衣伝説の残る打吹山が町のシンボル、温泉と湖が近くにある静かな町で、その昔、よく取材に訪れたものだ。アナウンサーになる希望はなく、嫌々やらされて不貞腐れていた生意気な新人が、倉吉の町を通る駅伝の中継で、初めてスポーツ放送をやり、「褒められて」「乗せられて」スポーツアナになったことを、昨日のことのように思い出し、四十八年もよくぞやり続けたものだと、町を歩きながら感慨にふけっていた。

 「スポーツの力と指導者の在り方」というテーマで私がスポーツ界から学んだことをお話したのだが、締めくくりの話は「社会性」についてだった。講演の数日前、新聞の片隅に2005の夏の甲子園の高校野球の決勝戦で、今、プロ野球楽天のエースとして活躍する田中将大投手と投げあって敗れはしたが健闘し準優勝した投手が、窃盗や万引きを重ね逮捕されたというニュースが掲載されていた。晴れ舞台を経験した若者が誤ちを犯すニュースを聞くとやり切れなくなる。

 子供達がスポーツや文化活動を始める時に、その指導者が「社会とのつながり」をかみ砕いて話して欲しいのだ。

 水泳や野球を始める時、技術を教える前にこのことを指導しなくてはならないのだ。子供だから、まだわからない年だから等と思ってはいけない。高校に進んだらなおのことだ。スポーツ、音楽などの文化活動を始める時、生徒に一番最初に教えることは「社会性」そして「マスコミ」とは「テレビ」とはなんだということだ。はっきり言わせてもらうと、学校の先生はテレビや新聞、雑誌について、どの程度知っているのだろうと首をかしげることがある。新聞や雑誌に名前がのる、テレビに映ると嬉しいだろう。でも、逆にその生徒が何かをやらかすと今度はマスコミからの制裁を受けるのだ。人気と注目を集める高校野球では毎年新聞に活動中止の不祥事を起こした学校の名前が掲載される。飲酒、喫煙、暴力、いじめ、窃盗等の行為である。一般の学生が起こしたとすれば、恐らく、学校の中だけの処分で、よほど悪質で反社会的行為でなければ新聞やテレビで報道されることはないだろう。しかし、スポーツや文化活動をする学生はそうはいかない。指導者が、日々教え、諭さなくては絶対になくならない問題なのだ。スポーツをやることは社会と繋がっているから、報道でとりあげるのだ。若者は好奇心が旺盛だし、煙草や酒を飲んでみたいのは当たり前だ。私は父が若くして病死したので父の顔を知らない。母は当時「片親だからね」と言われないようにとよく諭した。それでも柔軟だった。「隠れてトイレでたばこを吸うなんてみっともないし、町で酒を飲むのはやめなさい。飲みたかったら、吸いたかったら、友達を家に呼び私と一緒にやりなさい」こうして私に大人の世界を覗かせてくれた。このやり方だって未成年の飲酒喫煙だから正しいやり方ではないだろう。ただ、家中でゴホン、ゴホン、ゲぇげえとなり、私達は道を誤ることはなかった。

 高校野球はある種特別なのだろう。ティームゲームと水泳では、注目度の違いもあるだろう。しかし、スイミングスクールに子供が入ってきて、選手コースに進む時は、例え子供でも「スポーツをやることは社会の扉を開けること」と教えて欲しい。

 講演から帰って数日後、この夏の甲子園で準優勝の青森光星学院のベンチ入りのメンバーの飲酒が発覚した。栄光の座から彼らは退学処分になるという。高校野球連盟の学校への処分は間もなく出る。この不祥事が発覚したのは、彼らがブログに書き込んだことから判ってしまった。このことも、指導者はよく考えて欲しい。ブログやメールをすることは誰にでも読めることになるからだ。それだけでも社会性の欠如だ。私は携帯のメールはやらない。デスクパソコンでの仕事の上では使う。ブログには批判的だ。日記は人に読んでもらうものではない。自分が読み、記録に残す為に書くものだ。やってはいけないとされていることをブログに書いて自慢したくなる若者の心情は理解出来るが、「浅はかだ」としかいいようがないだろう。これは親の躾の問題なのだろうが、今や躾も何もなく、先生方、指導者は「モンスターペアレント」を恐れているはずだから、大変だと思う。「スポーツと社 会性」指導者はよく勉強し、考えて選手を導いて欲しい。

 八月はインターハイやユニバーと頑張った選手のことを書きたかったのだが、止むにやまれず不愉快なことを書いてしまった。お許し願いたい。



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