テニスの4大大会の幕開けとなる全豪オープンは1月15日からメルボルンで開かれた。この季節のオーストラリアは夏の真っ盛り、暑さは半端ではない。2日目には気温は41度、髪の薄い私などは頭が熱く、痛いほどだ。何処にいてもぼーつとする。とてもプレーが出来る状態ではない。各コートのプレーは中断されるが、センターコートのロッドレーバーアリーナは屋根が閉じられ、それから、プレーは再開される。
このメインコートに男女のスター選手たちが続々と登場するのた。世界ナンバー1の王者・ロジャー・フェデラー、現代のシンデレラガール・マリア・シャラポワ、そして、ロディック、サフィン、ナダル、モレスモー、クライシュテルス、まさに百花繚乱のスターたちの厳しく、激しい戦いが繰り広げられた。
そのロッドレーバーアリーナが、今回の第12回世界水泳選手権の競泳とシンクロのプールに早代わりすることになる。スイマーたちはテニスコートで泳ぐことになるのだ。最近の例では、福岡と同じケースになるが、簡易プールをつくりあげ、そこで世界選手権を開く。オーストラリアでは、水泳は人気スポーツだし、プールなどの施設は整っているのだが、多くの観衆を収容できるスタジアムスタイルのプールで開催することに踏み切った。このロッドレーバーアリーナだと1万人の観衆のもとで大会を運営することが出来る。オーストラリア選手の期待感も高く、「2度とやれないプールでメダルが取れたら、いい思い出になるので楽しみだ」という。
ところで、スイマーの皆さんにもスタジアムの名称となっているロッドレーバーさんを紹介しておこう。テニスの世界では「神様」といえる名手で年間のグランドスラムを2回とったテニス界でただ1人の選手である。グランドスラムというのは、全豪、全仏、ウインブルドン、全米と世界の4大大会をいい、その全てを連続で優勝するのをグランドスラマーという。そのグランドスラマーを2年もやってしまったのだから、長いテニスの歴史の中でも、ただ1人だけと言うのも頷けよう。会場のメルボルンナショナルテニスセンターはスタジアムとコートを合わせて16もあり、巨大なスクリーンを設置した美しい庭園には、オーストラリアのテニスの歴史を築いた著名選手の胸像がずらっと並んでいる。世界から集まってくるスイマーにとっては、初めて経験するテニスの舞台での世界選手権になるはずだ。
水泳王国と言われるほどの伝統あるオーストラリア水泳界だが、スーパースター・イアン・ソープは世界選手権を迎える前に引退してしまった。今回のオーストラリアティームは男子より女子に注目が集まっている。昨年行われたコモンウェルスゲームで男子の金メダルがたった1つだったのに対し、女子は16の金メダルをとっている。今回の世界選手権でオーストラリアが最も期待し注目しているのは、ジョディ・ヘンリーだろう。女子は強くて美しいことが、今のスポーツ界でスターになる条件といえるのだが、ヘンリーはまさにピッタリだ。世界記録を出し、オリンピックで金メダルを3つとり、美しく、華やかな雰囲気の選手である。1月の中旬にメルボルンで行われたファッションショーに登場。プールの水面上に創られた舞台を颯爽と歩き注目を集めていた。将来は本気でモデルの世界に進みたいと思っているようだった。金メダルを土産に、マスコミや芸能の世界で生きていく逞しい女性は日本にもいるようだが、ヘンリーもそうなるのだろうか。尤も、今ヘンリーは3月の地元で行われる世界選手権にターゲットを絞っており、厳しいトレーニングに明け暮れているという。オーストラリアの女子は国内のライバルも多く、ヘンリーはコモンウェルスでリビー・レントンに敗れ、暫くは落ち込んでしまいコーチのシャノン・ローランと約6ヶ月も離れ、ジョン・フォーリーにコーチングを頼んだほどでした。今はローランに戻っていますが、それほど、金メダリストでもうかうか出来ない高いレベルの選手層になっているようです。ヘンリー、レイトン、レイセル・ジョーンズ、ジェシカ・パーカーと誰もが勝つチャンスがあるとオーストラリアのメディアは期待していました。
ロッドレーバーアリーナがプールになると、テニスの選手が戦っているコートは水の中ということになります。マリア・シャラポワがサービスをする腕とラケットだけが水面上に突き出ることになります。世界選手権に出場する選手の皆さん、皆さんが泳ぐ水面下で、シャラポワやフェデラーがサーブしショットし、激しく走り回ったのです。何だか可笑しくなりませんか。
ところで、この簡易プールに使われる水は600万リットルです。メルボルンのあるビクトリア州は、この夏、歴史的な渇水に苦しんできました。山火事が続き、給水制限が続きました。ビクトリア州政府はこの世界選手権のプールで使った600万リットルの水を30時間かけて給水車に移し、1300本の街路樹の樹木に給水する計画です。ガーデンシティといわれる緑豊かで「世界1住みやすい都市」と言われるメルボルン、市民は大好きな水泳の世界選手権の開催を待っていますし、使われた水を緑の木々も待ち望んでいます。開幕日の3月18日、メルボルンは過ごしやすい秋を迎えるはずです。 |