放送局リレーコラム
スカパー!でプロ野球を中継している各放送局がリレーでお届けする企画。
スカパー!野球倶楽部
第2回 J SPORTS「野球好き」 島村俊治

 久しぶりにニューヨークのシェイスタジアムで大リーグ観戦を楽しんだ。毎年、この季節は全米オープンテニスの中継に来ている。このメッツのホームグランドではナショナルテニスセンターの隣にありながら、どうしても放送が始まると時間がなく、ここ数年は照明の明かりを見るだけ、むしろ松井秀喜のいる伝統のヤンキーススタジアムへ出かけてしまっていた。

 どの試合を見に行っても、必ずスタジアムに入るとプログラムを買う。一部4ドル、試合のスコア−を書き込む小さなエンピツ付きなのは昔から変わらない。
この日メッツ対ドジャース、でも松井稼頭央と野茂は故障でいない。せめてドジャースにいた日本でもお馴染みのピァッツァを探したが、彼も故障と不調で外れていることを思い出した。それなのに、スタンドはピァッツァのユニフォームを着たファンが多くちょっと寂しくなった。観衆の入りも70%足らずだ。MLBは必ずしも大人気でどこも繁盛しているなどと思ってはいけない。大リーグ中継は日本人選手だけを追っていてMLBの本当の姿を伝えているわけではないのだ。
試合が始まった。隣のボックス席には親子三代の家族づれ、なんと一番熱心なのはおばあちゃん。例のプログラムのスコア−をつけながら観戦、そのうち、私のスコア−を覗き込み「私のは自己流なのよ。でも見本の通りにやってるつもりよ。」と話かけてきた。二人のお孫さんは勿論クラブ持参、ファールが飛んでくるのを待って、クラブを叩いている。電光スクリーンにあのクレメンテの懐かしい映像が写し出される。祖国の災害を救うため飛行機をチャーター、救援物資を送ろうとして飛行機事故で亡くなったヒーローの勇姿だった。野球好きのおばあちゃんは孫に話す。こうして歴史は少年の心に刻まれ、ヒーローは行き続けるのだろう。

 応援するためだけに球場にくる日本のファン、みんな一緒に高校野球の応援団のように旗をふり、風船を飛ばす日本のファン。アメリカでは、なんとなくザワザワしている。皆それぞれに話したり笑ったりピーナッツを食べちらかし、ビールを飲む。投手投げる瞬間だけ注目する。ボールパークにきたファンは、それぞれの楽しみ方をし、家族、友人、恋人同士の会話が聞こえてくるのだ。ここにも、日米の野球の楽しみ方の相違に気づく。でも共通しているのは、「野球好き」ということだ。

 「J SPORTSがお送りしているプロ野球中継好き、今夜は・・・」で始まる今シーズンのJ SPORTS中継は、とことん「野球好き」にこだわっている。民放やCS放送は一般的にホームティームを徹底的に立ち上げ徹底的に持ち上げ、ホームティームサイドからの放送になる。プロ野球の基本はホームアンドアウェーだから、このやり方が間違っているわけではない。しかし、大差で負けている試合になると褒めようにも褒められないし、逆に愚痴や批判が多くなる。思い入れが強いと「坊主にくけりゃ・・・」になりかねないのだ。逆に大差でリードしていると相手への思いやりも薄れ、わめき、大騒ぎするアナウンスの解説になる。

J SPORTSの「野球好き」は、とことん勝負にこだわり、野球の素晴らしさそのものを伝えようというテーマに挑んでいる。中継の最大のポイントはディレクターの作り出すその場に相応しい「画づくり」にある。TVは始めに「映像ありき」なのだ。解説やアナウンスは、その優れた映像をどうアシストするかに過ぎないのだ。ファンの皆さん、放送の善し悪しは全てディレクターが握っています。そこまで見えたら、あなたは真の「野球好き」になれるでしょう。そして、伝える私の座右の名は、鶴岡一人さんの戒め「シマちゃん、選手には親も妻もあれば子のあるんやで」、いい気になって傲慢にならず謙虚に伝えようと諭してくれた言葉なのです。
「プロ野球中継・野球好き」ディレクター達の意気込みと情熱が、きっと画面からほとばしってくるはずです。


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