指導者のためのスポーツジャーナル 秋号
TOKYO 2016への道〜拝啓、2016年
日本だから、できる。新しいオリンピック!「事業に活かしたい名勝負」

 2006年8月、東京が国内立候補都市となって以来続けられてきた、長い招致レースがフィナーレを迎えようとしている。
 来る10月2日、開催都市が国際オリンピック委員会(IOC)総会で決定されるが、大団円となることを願ってやまない。
 スポーツジャーナリストの島村俊治氏。NHK入局以来、一貫してスポーツ実況にたずさわり、バルセロナにおける岩崎恭子(水泳)、長野における清水宏保(スケート)の金メダル獲得など、数々のオリンピックシーンを日本の視聴者に伝えてきた。
「オリンピックは、4年間全身全霊でトレーニングに励んだ人間の営みの集大成。だからこそと尊い」と、オリンピックの生き字引が語る2016へのオマージュで、この連載を終えたい。
 
 「これまで取材したすべての大会が、ぼくには印象深い。たとえば酷暑のなか行われたアトランタ大会。競技にとっては最悪のコンディションでしたが、参加選手にわけへだてなく声援をおくるアメリカ人とそのスポーツを愛する心に感銘を受けました。
 バルセロナ大会でマラソンコースを下見した時のこと。地元の人に、「え、ここを選手がはしるのかい?」と、逆に驚かれて、こちらもびっくり。すぐにイレ込んでしまう日本人とは違い、国民性の違いを感じました。競技だけでなく、都市の文化や歴史、地域の人たちとの結びつきを含めた総合体育大会、それがオリンピックなのです。“テレビンピック”というぐらい、今はテレビとオリンピックが切り離せなくなりました。でも、テレビは制作者の視点によって作り上げられたものなのです。せっかく地元に来るのであれば、せひ生で観るチャンスを生かしてほしい。
 スポーツには勝利の喜びだけじゃない、哀しみや残酷さなどがたくさん散りばめられています。ロサンゼルス大会のマラソンでフラフラになりながらゴールしたアンデルセン選手の姿は、世界中の人々の心にいまも焼きついています。アスリートの生の姿は、子供たちの将来の糧になるでしょう。メダルの数や勝ち負けを超えた、スポーツと人間のギリギリの関係を感じて欲しいと、心から願っています。



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